2016年04月25日 公開
2016年04月26日 更新
――TECH::CAMPの卒業生が作ったサービスには、どういうものがあるのでしょうか?
真子 たとえば、柴山和久さんという方は、資産運用を自動化するサービスのプロトタイプをTECH::CAMPで作り、ベンチャーキャピタルに持ち込んで5,000万円を調達しました。その後、ウェルネスナビという会社を立ち上げて、昨年10月には6億円を調達しています。
もともと金融関係の方で、その後、マッキンゼーに勤められていました。マッキンゼーの日本支社長に「起業するならプログラミングを身につけないとダメだ」と言われたそうで、それでTECH::CAMPを受講されたということです。
実際のサービスの開発では自分でコードを書かなくても、プロトタイプは自分で書くという経営者は多いですね。すると、熱意が伝わるのでエンジニアを集めやすいですし、エンジニアと技術的な話もしやすいですから。
――今後の展開としては、どういうことを考えておられますか。
真子 既存事業のTECH::CAMPに関しては、少なくとも今後5年間は伸びていくと思います。IT系のスタートアップ企業がどんどん盛り上がっていますが、そういう企業の中核にいるのはエンジニアです。ですから、エンジニアの需要が高まっていき、エンジニアを目指す人も増えていくと見ています。エンジニアが花形の職種になっていくでしょう。
米国ではすでにそうなっていて、親が子供に「野球選手になりなさい」というように「エンジニアになりなさい」と言っている状況です。シリコンバレーのエンジニアの年収は1,000万円を超えていますし、大学の情報系の学科の倍率はこの5年で5倍くらい上がっています。Dev Bootcampなど、TECH::CAMPのような短期集中プログラミング教室も増えています。
教室の数も増やしていきたいと考えています。今年4月に、東京の渋谷、大阪の梅田に続いて、福岡に3カ所目の教室を開きます。やはり、教室に来ていただくほうが、オンラインだけで完結するよりもモチベーションを維持しやすい。教室では、1日2回、15分ずつ、手を止めてPCを閉じ、他の受講生とコミュニケーションを取る時間を設けています。互いの進捗状況を知ることも、モチベーションにつながるからです。
他の事業としては、「TECH::WORK」という、プロトタイプ開発のクラウドソーシング事業を今年3月に始めました。プログラミングの技術はあるのに実績がないから仕事が取れないというエンジニアは数多くいます。そういう人たちは単価の安い仕事をいくつも請け負って実績を作らざるを得ないわけですが、これでは非効率。この問題を解決するために始めたサービスです。
普通のクラウドソーシングでは、発注者は誰に仕事を発注するかを選べます。すると、当然、実績のある人に仕事が集中し、実績のない人には回ってこない。そこで、「TECH::WORK」は、誰に発注するかを選べないようにしています。品質は、個々のエンジニアではなく、TECH::WORKの運営チームが保証します。
発注していただいた仕事は、ディレクターが、どの部分をどのエンジニアに割り振るか判断します。ディレクターは個々のエンジニアのスキルを把握しているので、実績がなくても、スキルがあるエンジニアには仕事を割り振ります。また、必要に応じてエンジニアの支援もします。いわば教育係でもあるわけです。
『TECH::WORK』のホームページより
これからの展開としては、人材会社と提携することも考えています。エンジニアを採用したいと思っている企業は数多くありますが、エンジニアの数は常に不足しています。このギャップを埋めるために、人材会社に登録している方たちに「エンジニアになりませんか」と声をかけていただき、当社が彼らに教育をして、即戦力として企業に送り出す、というビジネスです。
――エンジニアの育成から、さまざまなビジネスが派生していきそうですね。最後に、真子代表の夢をお教えください。
真子 欧米ではエンジニアの地位が高く、先に挙げたザッカーバーグをはじめ、エンジニアが革新的なサービスを開発して経営者となるケースが多い。英国やフィンランドなどでは義務教育にもプログラミング学習が組み入れられるようになってきていますから、今後、ますますそうした人たちが増えてくるでしょう。
日本はまだ欧米のような状況ではありませんが、メルカリさんのように、エンジニア出身の経営者が革新的なサービスを生み出すことで成長する企業が現われ始めています。これから、この流れは大きくなっていくでしょう。TECH::CAMPによってプログラミングで挫折する人を減らし、世界的なサービスを生み出す人を増やしたいと思っています。
当社の理念は「人生にサプライズを」です。人生を劇的に変える機会を、1人でも多くの人に提供していきたいですね。
《写真撮影:長谷川博一》
更新:11月22日 00:05