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なぜ、モスバーガーは愛され続けるのか?

2016年02月05日 公開
2016年02月08日 更新

櫻田厚(モスフードサービス社長)

若い男性はとくに、「答え」を探しすぎないほうがいい

 ネット社会について櫻田氏がもう1つ危惧していることがある。それは、正解の捉え方だ。「ネットやデジタルの社会では、わからないことがあればネットで検索すれば、答えがどこかに転がっています。それを見つけ出し、最短でそこにたどり着くのが賢いやり方です。

 でも、唯一絶対の正解が存在しないリアルな世界で、このやり方は通用しません。状況が違えば、ふさわしい答えも違う。その都度、自分の頭で考えて正解を作っていくしかないのです。

 先ほど申し上げたように、モスバーガーのマニュアルは他と比べてごく簡単なことしか書かれていません。ところが最近の若い人はネット社会の影響か、答えが用意されていないと、どうしていいのかわからないようなのです。

 先日、20代の男性社員に『彼女はいるの?』と何気なく尋ねたら、押し黙ってあたりをちらちらと見ているのです。どう答えるのが正解なのか、周りの顔色をうかがっているわけです。むしろ女性のほうが、ズバズバと答えますね。

 別の言い方をすれば、失敗を恐れすぎているのです。でも、30回失敗した人と3,000回失敗した人がいれば、私は後者を評価します。3,000回の失敗の裏にはもっとたくさんの経験があり、それだけ成功もしているはずだからです。私自身、プロフィールを見ると成功ばかりしているようですが(笑)、その陰で山のような失敗をしてきているわけです。若い人にはぜひ、自分の頭で考えて、失敗を恐れずにたくさんのチャレンジをしてほしいですね」

 

モスバーガーの「家族的」な雰囲気の理由とは?

 モスバーガーはよく「家族的な雰囲気」だと称されることがある。これは、櫻田氏の経営哲学によるところが大きいようだ。

「私の使命とは、モスバーガーを永続させ、そこで働く人とその家族を守ることです。最近は仕事とプライベートを明確に分ける風潮が強いですが、私にとって社員やパート、アルバイトは家族です。今、全国のモスで約25,000人の人が働いていますが、経済的な面ややりがいも含め、私はみんなに幸せになってほしい。

 だからこそ仕事だけでなく、人間として成長してほしいと思う。人間としての成長なしにいい仕事はできません。私が社員のプライベートにも口を出すのは、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)ならぬ、OFF・JTも重要だと思うからです。

 1人ひとりが歩む人生と、モスが目指している道ができるだけ離れずに近いところにあれば、これほど嬉しいことはないですね」

 

             取材・構成 村上敬 写真撮影 まるやゆういち

 

                    『THE21』2015年12月号

著者紹介

櫻田厚(さくらだ・あつし)

〔株〕モスフードサービス代表取締役会長兼社長

1951年、東京都大田区生まれ。72年、創業者である叔父、櫻田慧に誘われてモスフードサービスの創業に参画。77年、モスフードサービスに入社。94年、取締役海外事業部長。98年、代表取締役社長に就任。14年4月より会長職を兼任。

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