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「男の身だしなみ」入門 最終回 Vゾーン編

2016年01月13日 公開

日野江都子(国際イメージコンサルタント)

人の印象の7割は「胸から上」で決まる!

連載もいよいよ最終回。最後に教えてもらうのは、その人の総合的な印象を決定づけてしまう「Vゾーン」。いくら個々のパーツにこだわっても、これを理解していないとすべてが台なしに!

 

「Vゾーンの黄金比」とは?

人の印象の7割が「胸から上」で決定するということ、ご存知ですか。証明写真やオフィシャルポートレートを見ればわかるとおり、写す部分は胸から上。全身写真を必要とする場面は思いのほか少ないことからも、人の印象を伝える情報は、胸から上に詰まっていることが証明されます。

これを、ビジネスパーソンとしての大事な印象を左右する身だしなみ部位に置き換えると、それはVゾーン。その人の顔や表情を引き立て、下に長く続くつま先までの印象をも想像させる重要な部分です。このVゾーンには黄金比として数値化できるくらいにきっちりした基準があり、だからこそ、その人のバランス感覚が測られてしまうとも言えます。

数カ月前、とある謝罪会見の様子を映像で見ていたときのこと。なんとなく違和感を抱き、その内容に集中できなかったことがありました。その会見は、後日皆が褒めるようなものだったにもかかわらず。そんな私の気をそらせた原因は、ワイシャツの襟とネクタイ、そしてジャケットが作る「Vゾーン」バランスが完全に狂っていたこと。表情を作り言葉を発する顔のすぐ下に、せっかくの会見内容をかき消すノイズが発生していたのです。その方は緊急謝罪会見で、十分な準備をする時間がなかったのでしょう。しかし企業のトップたるもの、それは言い訳にはなりません。

視覚情報は、語る言葉以上に速くそして強く伝わります。それが負のものであれば、その情報が伝わった瞬間、人に違和感や理由なき疑問符を抱かせ、語っている言葉は耳に入らなくなるのです。これこそ「目で聴かせる」ということですね。

ちなみにその組み合わせとは、襟羽根の幅の狭いワイシャツ、ワイシャツとは合っている細め幅のタイ、その一方で、スーツの上着は一般的でラペル(下襟)幅が広めのもの。緊急で着用されたことがありありとわかりました。その組み合わせでは、首元がちんまりとして存在が小さく見え、視聴者に言葉にはできない不安感を抱かせていただろうと推察します。Vゾーンにおける数ミリは、これほどに印象を大きく左右するものなのだと確信した瞬間でした。

さて、今回でいったん締めくくりとなる『「男の身だしなみ」入門』。シャツ、スーツ、靴、ネクタイを取り上げてきましたが、何よりも重要なのはそれら組み合わせのバランスと、着用したあなたとのバランス。部分的に良くても意味を成しません。総合的にどう見えるのかが大事。それは仕事においても、夢中になると一つのことしか見えなくなる人なのか、広い視野を持てる人なのかを顕著に物語っています。自分の姿を引き気味に見て、全身を整えることができるようになると、仕事でも一歩引いた広い目で見ることができるようになってきます。あなた自身をそのまま語る、日常的な身だしなみが作る印象。まずはできることから習慣化したもの勝ちです。誰にも奪われることのない、仕事の武器となることをここにお約束しつつ、「男の身だしなみ」入門編のまとめとしましょう。

Vゾーンの黄金比
1 襟羽根の幅=ラペルの幅=ネクタイの幅
2 ノット(結び目)の幅=襟の開き÷3

 

NG例

シャツの襟羽根とラペルが同じ幅、ネクタイが細め:胸元の強さが足りず、自信や勢いがなく見える。
襟の開きに対してノットの幅が狭く小さい:襟元が寂しく、気の弱い人に見える。

シャツの襟羽根とネクタイが太め、ラペルが細め:襟元にボリュームがありすぎて、押しが強すぎる、自我の強すぎる人に見える。
襟の開きに対してノットの幅が広く大きい:襟元が重苦しく、発言のうるさい人に見える。

ネクタイは立たせない
ノットを根元からグッと立たせる方法がありますが、通常のビジネスシーンではNG。場をわきまえない人、使い方を知らない人と判断されてしまいます。胸元の立体感を強める効果はありますので、TPOをわきまえ、オンビジネスではない場で試しましょう。

VゾーンのワイシャツのシワはNG
Vゾーンに見えるワイシャツのシワはNGです。少し大きめの物を着用していると、上着を羽織ったとき、必ずシワがよってしまいます。これを目安に、シャツのサイズも再考しましょう。

シャツの襟は、Vラインと接触していること
シャツの襟の先端は、スーツの襟が作るVラインにほんの数ミリほど、軽く抑えられている感じがベスト。Vゾーンの内側に襟の先端が見えていると、おさまりが悪いものです。襟の先端に向かう直前とVラインがぴったりと接触して、先端の鋭角部分は見えないようにすると、整然と落ち着いた印象を保てます。

 

正しい例

顔の形や大きさと、黄金比を決める長さのポイント
①襟羽根の幅=②ラペルの幅=③ネクタイの幅

お顔が小さい・細めの方は、全体幅を若干狭めに、お顔ががっしりしている方は広めにされることで、精悍さを感じさせるいいバランスを作ることができます。
細いラペル・細めすぎるタイはスタイリッシュなのですが、必要以上に細すぎると遊びの服になり、ホストのように見えることもあります。着用の用途がビジネスであることを念頭に入れて選びましょう。

 

松屋銀座スタッフの〝買い方″ワンポイントアドバイス

ご自身がお持ちのスーツ、ワイシャツ、ネクタイをしっかりと把握しましょう。ご購入の際は全身を鏡で確認し、バランスを見ることをお勧めします。

行きつけのお店を作り、馴染みの販売員を作ってはいかがでしょうか。服の話だけでなく、お仕事の話などをすることで、お客様に合った商品を提案してもらいやすくなります。

 

(『THE21』2015年11月号より)

写真撮影(NG例):まるやゆういち
OK例:HUGO BOSS(The shops at Columbus Circle, NY)
取材協力:松屋銀座

著者紹介

日野江都子(ひの・えつこ)

国際イメージコンサルタント

米国ニューヨーク在住。1994年より日米にて活躍、国際的イメージコンサルタントの第一人者として20余年のキャリアを持つ。2004年、Real Cosmopolitan Inc.(株式会社リアル コスモポリタン)設立。NY・東京の二大拠点を持ち、企業・人・ブランドの価値を高める、国際基準の戦略的イメージブランディングとマネジメント、企業トップエグゼクティブや政治家のメディア対応イメージ・コンサルティングで高い評価を得ている。
AICI(国際イメージコンサルタント協会)ニューヨーク支部ボードメンバー。
著書に『NY流 魅せる外見のルール』(秀和システム)、『仕事力をアップする身だしなみ 40のルール』(日本経済新聞出版社)他、執筆多数。
www.thelookbest.com

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