2015年12月22日 公開
2016年11月14日 更新
仕事に失敗や挫折はつきもの。しかし、そこから立ち直れないと、後々のキャリア構築に支障をきたしかねない。それを克服する手法として近年話題となっているのが「レジリエンス」。そのノウハウを学び、しなやかで折れない心を手に入れよう。
「レジリエンス」とは、「心のダメージから立ち直る力」のことです。これは人間にとって不可欠な力です。失敗や挫折に直面したときは、誰しもダメージを受けるもの。しかしそれを引きずると、人は新たなチャレンジを避けるようになります。今後の成長を自ら阻はばむような行動パターンを身につけてしまうのです。
その状態を脱却する力がすなわちレジリエンスなのですが、これはいわゆる「ポジティブシンキング」とは違います。状況をきちんと分析せずに「大丈夫!」「とにかく頑張ろう!」などと自分を奮い立たせるのは非現実的ですし、一時的な効果しかもたらさないでしょう。
失敗時に落胆や自己嫌悪などのネガティブ感情が起こるのは当然です。それを認めたうえで、合理的に回復を図るのがレジリエンスの手法なのです。
レジリエンスは一時しのぎの景気づけではなく、長期的な「打たれ強さの学習」です。この打たれ強さには、三つの要素があります。一つ目は「回復力」。逆境に直面してもすぐに元の状態に戻れるメンタルの強さです。二つ目は「緩衝力」。ストレスやショックに耐えられる心の弾力性です。そして三つ目は「適応力」。環境の変化や予期せぬ事態を受け容れ、対応する力です。
「三つとも、まるで持ち合わせていない」「打たれ弱いタイプだからとても無理」と考える必要はありません。レジリエンスは後天的に習得できるからです。生来の性格がどうであれ、技術さえ学べば誰でも身につけられます。そしていったん身につけば、あらゆる困難に対応できるようになるでしょう。レジリエンスを日々発揮できるか否かで、何十年にもわたるビジネスマン人生は大きく変わります。
とくに三十代、四十代の中堅ビジネスマンにこそ習得が不可欠。年齢的にもポジション的にもストレスがかかりやすいこの時期を乗り越え、今後も続くキャリアをより良いものにする力をつけましょう。
ダメージを受けた後、レジリエンスは、「三つの段階」をたどって習得します。その各段階に対応する「七つの技術」を使うことで、心を整えるのです。
第一段階は「底打ち」。ダメージを受けた直後の状態です。ここで必要なのは、①「ネガティブ感情から抜け出す」こと。心に渦巻く感情を「怒り」「悲しみ」「落胆」などに要素化し、客観視するとリセットを図れます。このとき、思いを紙に書き出すのも有効です。次は②「思いこみを手なずける」こと。過去の失敗体験を大きく捉えすぎていないかを振り返り、不要な思いこみを捨てることで「底」を脱出できます。
第二段階は「立ち直り」。ここでは③「自己効力感を高める」ことと④「強みを発見する」ことが重要です。自己効力感とは「自分はできる」という思いのこと。これを高めるには成功体験が必要です。「簡単な作業を行なう」など小さなことを積み重ね、「できた!」と思える状況を作りましょう。強みを発見するには自己分析が有効。WEBで公開されている強み診断ツール「VIA‐IS」などがお勧めです。
加えて、⑤「ソーシャルサポートを持つ」=支えてくれる人について考えましょう。相談に乗ってくれる人、励ましてくれる人などを五人リストアップすればいざというとき安心です。ここまで態勢を整えられたら、⑥「感謝する習慣」をつけましょう。「今日の良かったこと」を日記につけるなど、プラスの経験に目を向けることで、立ち直りを確かなものにできます。
最後の第三段階は「教訓化」。ここで行なう⑦「失敗経験から意味を学ぶ」ことが、もっとも重要な技術です。失敗の原因を振り返り、繰り返しを防ぐ方法を考えましょう。
ここで役立つのが、下図の「逆境グラフ」。今までの人生を振り返って心のプロセスを分析するツールです。縦軸が心の浮き沈み、横軸が時間経過。どの段階でどう感じ、何がきっかけで好転したかを思い起こして書き出し、この経験の意味・学んだこと・それを活かす方法を考えましょう。
なお、これは必ず「立ち直ったあと」に行なうこと。さらに、信頼できる誰かと一緒に行なうことが大切です。客観的な視点を確保しつつ互いを分析すれば、共感力も養えます。こうすれば、自らの回復力のみならず、他者の痛みを理解する力も備えた、真の意味での「強い人」になれるでしょう。
更新:11月24日 00:05