2015年03月06日 公開
2022年11月14日 更新
さて、こう言うとバラ色の未来ばかりが開けているようですが、もちろん、懸念材料もあります。参考になるのが長野の事例。1998年の冬季オリンピックに合わせて、その前年に開業した新幹線東京-長野間ですが、オリンピックの後、ホテルや旅館は急速な業績悪化に見舞われました。かつては宿泊が必要だった長野出張が日帰りでできるようになり、宿泊客が減少したのです。オリンピックに合わせて整備された中心部の商店街にも、シヤッターが目立つように。これと同じことが、沿線各地で起こり得るわけです。
さらに、新幹線開業と同時に、並行する在来線がJRから切り離され、各県ごとに別々の会社が運営することになります。財務基盤の弱いこれらの会社が運営をすることで、運行本数の減少や運賃の値上げが懸念され、地元の人が不便を強いられる場面も出てくるでしょう。
とくに長野や上越といった「途中駅」の中には、金沢のほうに観光客を持っていかれてしまうという危機意識を持っているところもあるでしょう。上越妙高駅のように、市街地と新幹線駅が離れている場合はなおさらです。
ですが、そこは工夫次第です。たとえば今、軽井沢は数々のショッピングセンターやアウトレットモールが立ち並び、非常ににぎわっています。新幹線が開通したことにより、首都圏から日帰りで行けるスポットとして人気を集めているのです。私もときどき軽井沢のゴルフ場に日帰りで行くのですが、ちょっと遠出をしたくらいの印象しかありません。
考えてみれば、飛行機はこれらの地域を通過すらしてくれなかったわけで、通過してくれる以上、途中下車してもらえばいいのです。金沢に行くついでに善光寺に立ち寄ってもらい、宇奈月温泉に宿泊してもらうにはどうすればいいか。どう魅力を打ち出すかが決め手となるでしょう。実際、すでに糸魚川など沿線各地は、いろいろなPR活動を始めているようです。
今後、北陸および沿線各地がどのような工夫を凝らし、どう変わっていくのか。楽しみに見守りたいと思います。
小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント、〔株〕小宮コンサルタンツ代表
1957年、大阪府生まれ。1981年、京都大学法学部を卒業後、東京銀行に入行。1986年、米国ダートマス大学経営大学院でMBAを取得。帰国後、経営戦略情報システム、M&A業務や国際コンサルティングを手がける。1993年には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1996年、〔株〕小宮コンサルタンツを設立。『小宮一慶の1分で読む!「日経新聞」最大活用術』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。
<掲載誌紹介>
<読みどころ>同じ仕事、同じ条件のはずなのに、「なぜか今日はやる気が出ない」という経験、誰しもあると思います。それはなぜか、というのが、今回の企画の原点です。
そこで今回、やる気を出すための方法論はもちろん、なぜやる気は上下するのかという「やる気のメカニズム」まで、専門家の方々に教えていただきました。理論+実践の最強のコラボレーションで、ぜひ明日の仕事のモチベーションUPに役立てていただければと思います。
更新:11月22日 00:05