2014年10月20日 公開
2023年01月12日 更新
部下との関係で苦労が多いのは、いかに叱るか、指導するかというところ。ここでも、「役割を演じる」がポイントだ。
「私自身はどちらかと言えば、なめられやすいタイプ。私も言いたいことを言えないほうですし、カリスマリーダー的な強さもありません。
そういう自分かいるとしても、大事なのは役割を演じ切ること。『こんなことは部下にとても言いにくい』と思っても『社長をやっている岩田として、会社のためにここは強く注意しなくてはいけない』と考えると勇気が湧いてきます。自分の思いではなく、部署のため、会社のため、あるいはその部下自身のため、といった『大義』を持てるかどうか。言うべきことを言う上司になれるかどうかは、そこで変わってきます。
もちろん、自分が一所懸命に仕事をしていることは大前提です。人並み以上に努力している、朝は誰よりも早く出社している、後ろ指をさされるようなことはしていない、といった自信がなければ、人に強く何かを言うことはできません」
特に苦手意識を感じている人が多い女性の部下への接し方でも、岩田氏はしつかりとした原則を持っている。
「あくまで一般論ですが、女性の部下に対しては男性の部下以上に等距離で付き合うことを意識する必要があります。つまり、えこ贔屓をしないように気をつけないといけません。
たとえば、職場におみやげを持って行くとき、私はいつも『まず女性に配って、余ったら男性にも配ってください』と頼むようにしていました。AさんはもらったのにBさんはもらっていない、といったことに女性はとても敏感だからです。
あとは、相手に関心を持って、ちょっとした声かけを欠かさないことです。セクハラにならないように十分注意する必要はありますが、『その髪型素敵ですね』といった声かけをする。ちょっとした声かけでも、普段から関心を持って観察していないと気の利いたひと声はかけられません。そしてこまめに『ありがとう』と感謝を伝える、といったことはとても大事です。
女性は敵に回せばこんな手強い人たちはいないです。逆に味方になってもらえば、損得を抜きにして大きな力を発揮してくれます」
相手に関心を持ち、敬意を示すことは、上司との関係でも大きな意味を持つ。
「地位が上になるほど、自分に対してフィードバックはもらいにくくなるもの。リーダーは『自分の判断や発言は正しかったのか』という不安をいつも持っています。そんなとき、『社長のあのお話は良かったです』と褒めてくれたり、恥をかかせないように、こっそりと『あの言い方だと誤解を招くと思いますよ』と伝えてくれたりする部下は、とてもありかたいものです。上司だっていつもフィードバックやフォローが欲しいと思っているもの。そこに気を配れれば、かわいがられる部下になれるはずですよ」
岩田松雄
(いわた・まつお)
〔株〕リーダーシップコンサルティング代表
1958年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、日産自動車〔株〕入社。UCLAアンダーソンスクールに留学。外資系コンサルティング会社ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラ〔株〕役員。〔株〕アトラス代表取締役社長、〔株〕タカラ常務取締役等を経て〔株〕イオンフォレスト(ザ・ボディショップ)代表取締役社長に就任し、店舗数・売上げを拡大。その後、スターバックスコーヒージャパン〔株〕CEOとして業績を右肩上がりに成長させ、2010年には過去最高売上げ1,016億円を達成。UCLAビジネススクールより全卒業生3万7000人から「100 Inspirational Alumni」(日本は4名)に選出。
<掲載誌紹介>
2014年10月号
<読みどころ>今どきの会社員は、プレイングマネジャーとして上司と部下の両方の立場であることが多く、また会社員人生の中でその時期はとても長い。どちらの立場でも、縦横のバランスを保ち、円滑な人間関係を築けることが、プロのビジネスマンの条件だが、実際にはここで悩みを抱える人が多い。ひどいときは、人間関係によって体調を崩すことや、キャリアの妨げになることも。会社のためにも自分のためにも、組織で思う存分力を発揮するためには、人間関係の良好さは必須条件。そのための対人術やセルフコントロール術について、各界で活躍している方々や専門家の方々に指南していただいた。
更新:11月22日 00:05