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会社へのイライラを仕事の成果に変える方法

2014年05月29日 公開
2022年12月08日 更新

俣野成敏(プロ研代表)

『THE21』2014年6月号より》

 

「したい仕事ができない」「自由に動けない」と思ったら、自分の自由意思で働く時間を増やす

会社勤めをしていると、さまざまな場面で、会社に対してイライラを感じることがあるだろう。
ときには、会社が仕事の邪魔をしているのではないかと思うことさえあるかもしれない。
そうしたイライラは、どのように解消すればいいのか。
『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)などの著書がある俣野成敏氏に教えていただいた。

 

会社へのイライラを抑える3つの“見える化”

 会社に対してイライラする原因の1つは、自分がコントロールできる時間が限られていることでしょう。会社の中でイキイキと楽しく働いている人は、自分の意思で動いている時間の割合が大きい。イライラしないようにするには、自分の意思で動く時間を増やすことが重要です。

 スケジュール帳を開いて、指示を受けて動いている時間と自分の意思で動いている時間を色分けしてみてください。そうして“見える化”することが第一歩です。

 新人のうちは、自分でコントロールできる時間はゼロです。上司や会社から与えられる仕事で、自分の時間がすべて埋まってしまう。これは、何も嫌がらせをしているわけではなく、“親心”から、そうするのです。

 自分でコントロールできる時間を増やすためには、仕事を与えるよりも自由に動いてもらったほうが価値が高い人材だと、上司や会社に思ってもらわなければなりません。そのためには、上司や会社の期待を超える成果を出すことです。

 ただし、上司や会社の考える100点と自分の考える100点は違うことが多いということを忘れないでください。このことを覚えておかないと、「言われたことをやったのに評価してくれない!」とイライラが募ってしまいます。

 では、200点を目指せばいいのかといえば、私は、それは賢い方法だとは思いません。過剰はムダと思われてしまう可能性もあるからです。それよりも、“基準外得点”を意識するべき。指示された内容には入っていいけれども、指示の目的を考えればこれもやっておくといい、というプラスアルファをするのです。つまり、“気を利かせる”ということです。そうすれば上司や会社の評価が上がり、時間を自由に使わせてくれるようになっていきます。

 イライラを解消するためには、“イライラノート”をつけることも有効です。社内起業をしたばかりで、なかなか思いどおりにいかなかった頃に始めた習慣です。

 ノートの左側に、何に対してイライラしたのかを書きます。イライラするということは、「こうすればいいのに、どうしてそうしてくれないんだ」と他人に対して思っているということですから、自分にはその人の改善点が見えているということです。その改善策を右側に書きます。

 改善策は、自分ができることではなくてかまいません。むしろ、自分もできないことがほとんどでしょう。それでも、「こうすればいい」ということがわかる“視野”を持っていることを“見える化”するだけで、イライラ解消に効果があります。

 会社に対してイライラしないための方法の3つ目は、社内リソースに点数をつけて、その価値を“見える化”することです。つまり、お金に換算するといくらになるかを考えるのです。

 サラリーマンは自由に使えるリソースを会社から多く与えられているのにもかかわらず、そのありがたみを認識していないがゆえに、会社に対してイライラしてしまっていることが多い。会社から与えられているのは給与や賞与だけではありません。会社の看板があるからこそ仕事がスムーズにできるわけですし、細かいところでは、名刺やボールペンなども支給されているでしょう。上司や先輩にアドバイスをもらえば、それだけの時間、彼らを拘束していることになります。その時問にかかる人件費はいくらか。当たり前のように受け取っているそれらのリソースの対価を考えてください。そうすれば、会社に対するイライラを抑えることができるはずです。

 

動けば逆風は当たり前、反対は放置するべき

 この春、人事異動の辞令を受けた方もいるでしょう。不本意な異動で会社の不条理を感じる方もいるかもしれません。

 その気持ちはわかりますが、適性は自分よりも周りの人のほうがよくわかっているものです。ネガティブに捉えるのではなく、上司や会社に、自分に何を期待しているのかを確認するべきです。その際に、「今度の異動先で成果を出したら、私が希望する仕事をさせてもらえますか?」と尋ねてみてもいいでしょう。人事は上司や会社が決めるものだと思っている方が多いでしょうが、それは半分正しくて、半分は間違っています。仕事で成果を出せば、あなたの影響力が高まります。そのため発言権が強くなって、意向を聞いてもらいやすくなるのです。人事というのは、要するにマッチングです。野球のドラフト制度と同じで、「この部署に人が欲しい」となったときに、「あ、あいつがいるな」と思い浮かべてもらえるかどうかで決まるのです。私が香港に異動になったときも、辞令が出たのは、飲み屋で上司に海外赴任の意向を聞かれた少しあとでした。

 会社の中で少しでも大きな仕事をしようとすれば、あちらこちらから反対の声が挙がります。それに対してイライラしている方もいるでしょう。

 会社というのは部署ごとの部分最適の集合ですから、部署の枠を超える仕事をしようとすれば、逆風が吹くのは当然です。むしろ、逆風が吹いていないときは、「自分はチャレンジをしていない」と反省する必要があるかもしれません

 組織では、どんな提案に対しても、2割は賛成、6割は日和見、2割は反対するものです。この反対する2割を説得しようとしてもイライラするだけ。日和見の6割についても、なんとか賛成に回らせようとするのは得策ではありません。

 重要なのは、自分たちを“勝ち馬”に見せることです。勝ち馬には乗りたがるものなのです。

 まずは情報を発信すること。たとえば、自分たちの取り組みや考えを社内報に載せてもらうのもいいでしょう。どんなメディアも新しいネタを探しています。関心を持って話しかけてくれる人がいたら、絶対にグチなどのネガティブなことを言ってはいけません。何らかのポジティブな情報を話すのです。困ったときの相談も社外に対してするべきで、社内には良いことの報告をするようにしましょう。すると、そのうちに「何か面白いことをやっているみたいだよ」という雰囲気が広まり、「協力できることがあればするよ」と言ってくれる人が現われてくるはずです。

 

俣野成敏

またの・なるとし

(同)プロ研代表

1971年、福岡県生まれ。1993年、大手精密権械メーカー入社。2002年、会社の赤字転落が原因で30歳にしてリストラ候補となる。そこで一念発起し、在庫処分を担うメーカー直販店を社内起業。30代で年商14億円の無借金企業に育てる。2004年、33歳で現役最年少役員に抜擢。メーカー本体に帰還後、40歳で史上最年少の上級顧問に就任。2012年、独立。複数の事業経営のかたわら、私塾「プロ研」を創設してプロフェッショナルサラリーマンの育成に力を注いでいる。

 

<掲載誌紹介>

2014年6月号

<読みどころ>プレッシャーのかかる仕事を成し遂げるには、プロとしての実力や経験はもちろんのこと、メンタルの強さが必要です。しかし、「メンタルは生まれ持った性格」であると誤解している人も多いようです。では、いかなるときも平常心を保ち、結果に向かって最善を尽くすことができるようになるためには、どうしたらよいのでしょうか。今月号の総力特集では、ビジネスの第一線で活躍している方々に、強い心の保ち方についてアドバイスをいただきました。

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2024年10月号

THE21 2024年10月号

発売日:2024年09月06日
価格(税込):780円

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