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マネックス証券社長・松本大の「話し方の極意」

2014年03月27日 公開
2023年05月16日 更新

松本大(マネックス証券代表取締役社長CEO)

 

伝わらないと思ったら絶対に伝わらない

 今では相手に合わせて話をすることを重要視している松本氏だが、かつてはそうではなかったそうだ。学生時代から議論好きで、自分の話したいことを、自分の話したいように、とことんまで話してしまっていた。そのために相手を傷つけてしまったこともある。相手のことを第一に考えるのは、そうした失敗を経験してきたからという面もある。

 とはいえ、自分の想いを絶対に相手に伝えようという姿勢は、松本氏の根底につねにあるものだ。

 「32歳のときだったでしょうか。ゴールドマンーサックス証券にいたときの話です。

 東京オフィスの債券部には、私ともう1人の、合わせて2人のパートナーがいました。もう1人のパートナーは米国人で、そのとき、40歳すぎだったと思います。

 その米国人パートナーには、50歳くらいのベテランの日本人秘書がついていました。歴代4~5人のパートナーと仕事をしてきた方です。ところが、この2人が、どうも相性が合わない。うまくコミュニケーションが取れないのです。

 ついに、秘書が私のところに来て、『もう、あのパートナーと仕事をするのは無理です』と言いました。私は2人ともと仲が良かったので、『彼も良い人なのだから、2人できちんと話してみたら』と勧めました。すると、秘書は『じゃあ、ダメモトで話してみます』と答えました。

 そのとき、私の囗から、自分でも驚く言葉がスルリと出てきました。

 『絶対にわかってもらおうと思って話しても、わかってもらえないものなのに、ダメモトで話してわかってもらえるわけがないじゃないか』

 この言葉は、自分自身にとっても1つの発見でした。

 わかってもらえないから諦めるのではなく、わかってもらえないからこそ、わかってもらうための努力をもっとしなければならないのです。

 それから、その秘書はパートナーと話をして、素晴らしい関係にはならないまでも、普通に仕事ができる関係にはなることができました。やはり、最も重要なのは『絶対にわかってもらいたい』という姿勢なのだと思います」

松本 大

(まつもと・おおき)

マネックス証券㈱代表取締役社長CEO

1963年、埼玉県生まれ。1987年、東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズを経て、ゴールドマン・サックスに勤務。1994年、30歳で同社最年少ゼネラル・パートナーに就任。1999年、ソニー〔株〕との共同出資でマネックス証券〔株〕を設立。現在、事業持株会社であり、個人向けを中心とするオンライン証券子会社を日本・米国・香港に有するグローバルなオンライン金融グループであるマネックスグループ〔株〕およびマネックス証券〔株〕両社のCEOを務める。


<掲載誌紹介>

2014年4月号

<読みどころ>「ビジネスマンとしての経験を積んできているはずなのに、軽く見られているような気がする……」「同じことを言っているのに、自分が話すと、まともに取り合ってくれない……」訪問先で、あるいは社内でも、そのように感じることはないでしょうか。どうすれば、そんな状態から抜け出すことができるのでしょうか?今月号の特集では、自らメッセージを発信して協力者や顧客を得てきたビジネスプロフェッショナルの方々に“信頼される話し方”の秘訣を教えていただきました。

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