2013年09月04日 公開
2022年12月08日 更新
《『THE21』2013年9月号より/写真:まるやゆういち》
〔株〕アールシーコア(二木浩三社長)が手がける天然木の家が人気だ。2013年3月期の国内契約棟数は1,018棟で前期比12%の増加となった。
同社執行役員(事業戦略室責任者)の石井彰宏氏(57歳:写真)は、「東日本大寒災以降、住宅に対する人びとの考え方が変わったと言う。
好調な業績を背景に、「ゆとりあるライフスタイルをさらに提案したい」と、自社ブランドの商品を体感できる住宅展示場を増やす方針だ。
〔株〕アールシーコアは、「BESS(ベス)」というブランド名で住宅事業を展開している。
BESSの商品ラインアップは6種類。ログハウスが3種類、ログハウス以外の木造住宅が3種類となっている。当初は別荘用ログハウスの需要が多かったが、2013年3月期の販売棟数に占める自宅の割合は90%を超えている。
石井氏は言う。「『衣』『食』と同じように、『住』も感性で選ぶ時代です」。
天然木を使った個性的な家は、商品の特性上、「万人ウケを狙わない」。木材特有の香りが漂い、乾燥によるひび割れや節目もある。それを味わいと感じる人と、気にする人に分かれる。
アールシーコアが採用する市場戦略は独特だ。「顧客にファンになってもらう」というのがポイント。「木のぬくもりを肌で感じ、ライフスタイルに目覚めてもらう」ことが、消費者の心をつかむことにつながるという。同社では、その販売手法を、「農耕型営業」と呼ぶ。同社が注力するのは住宅展示場で、顧客獲得に「狩猟」に出るのではなく、「農耕」した土地に呼び込み、比類ない商品力を体感してもらう。住宅展示場間のカニバリもなく、「むしろ、複数の展示場をスタンプラリーのように回遊してリピーターになってもらう」ことを目指している。
BESSの商品を体感すれば、顧客の感性に響き、購入につながる。これは、複数業者を比較検討する一般的な戸建住宅の建築販売のあり方と一線を画す。「展示場で提案する企画住宅のプランで建てたいというお客様が多いこともあり、結果的に建築コストもリーズナブルに収まる」と言う。他社に負けまいと住宅設備を過剰サービスしたり、即日値引きで成約を迫る住宅営業とは大違いである。
何度も足を運んでもらって、「こんな暮らしをしてみたい」と思わせる。1人の営業マンが年間販売する棟数は8.2棟と、ほかの大手住宅メーカーの約2倍だ。
1985年創業のアールシーコアは、もともとは企画コンサルタント会社だった。「家自慢より暮らし自慢」というコンセプトを前面に打ち出して、「趣味の世界だから需要は限定的」とされていたログハウスを売り出した。住人の暮らし方よりも、住宅の機能性を重視しがちな住宅業界の常識に挑んだ格好になる。
アールシーコアは、「異端」を自認している。他業種出身者が多く、多様なアイデアが生み出されるという。ちなみに、石井氏は17年前に広告業界から転じた。アールシーコアは、本部と販社が数字データなどの詳細な経営情報を共有して、効果的なイベントや販促などのアドバイスを行なう。全国の販社が定期的に集まるミーティングや、顧客に「ファンになってもらう」ための接客研修なども開いている。
石井氏は「販社同士の交流もあり、運営する展示場の弱点を把握して改善できる」と言う。
BESS事業の国内契約棟数は、増加の一途だ。2013年3月期は1,018棟で前期比12%の増加となった。
「震災以降、家族との時間を大切にする意識が強まった」と石井氏はみる。展開する全国39カ所の住宅展示場の新規来場者数は、2013年3月期に約2万3千人。前期比15%の増となる。「世代を問わず『木のぬくもりを感じる家で、落ち着いたスローライフを送りたい』という人が増えているようだ」と言う。アールシーコアは、「豊穣なる耕作地」である住宅展示場のポテンシャルを全国100力所とみている。近隣展示場間の相乗効果を期待できるという。全国展開を加速するため、新たなFC(フランチャイズ)販社を求めているが、FC加盟料はとらない。あくまでもお客を集めて家を売った中から、ロイヤルティをもらうことにこだわる。
現在、BESSの販社は27社。販社の多くは工務店やゼネコンなど建築関連企業からの参入が大半だが、住宅建築が可能であれば、他業種からの加盟も歓迎する。ただ、BESS商品専用の展示場をつくるためには、初期投資が1億円近くかかることもあり、「年商10億円以上の事業規模」の企業が好ましいという。
アールシーコアはジャスダック市場に上場。2017年3月期の経営目標は、2012年3月期と比べ、売上高を1.9倍の180億円に、営業利益率を1ポイント上昇の8%に、それぞれ高めるという。
〔株〕BESS福岡西南
代表取締役社長
長崎秀人氏(48歳)は、福岡県内で2カ所のBESS専用の住宅展示場を運営する。明治30(1897)年創業の住宅建築会社「〔株〕長崎材木店」を先代社長の父から13年前に引き継いだ。天然木を使った注文住宅やリフォームなどを手がける。
「現業の施工技術力を活かしながら、チャネル拡大を目指した」と言う。2009年11月にBESSの特約店(モデルハウス1棟)になった。2011年1月には販社(同3棟)に。「『建築』を介して『ライフスタイル』を提案する『感性マーケテイング』に共感した」と振り返る。
ただ、販社になるにあたり、懸念が1つあった。長崎材木店の既存の注文住宅の商品群とBESSの商品群があることで、「顧客の奪い合いになるのでは、と危惧した」と言う。しかしながら心配は杞憂に終わる。
「長崎材木店の商品は『端正』な木の家で、BESSの商品は『ラフ』な木の家です。それぞれに計算された持ち味があり、結果的に捷み分けることができた」
現在、福岡市と太宰府市の展示場2カ所に、BESSのモデルハウス計9棟が並ぶ。商圏は半径40キロ程度。2010年に5棟だった受注件数は、2012年に32棟となった。
長崎氏は、「BESSのフランチャンズの最大の魅力は、数字の裏づけ」であると言う。感覚的なライススタイル論だけにとどまらない、詳細なデータに基づく本部の経営支援は、金融機関などに対する事業説明の際に手助けとなるという。
更新:11月27日 00:05