
カスハラ対策が進んでも、現場の悩みは消えていない。
コンビニの接客レベルは、オーナーの管理能力と直結します。
「従業員を教育できていない」
「求心力がない」
「性格が暗い」
このようなオーナーのもとでは接客クレームが多発します。さらにクレームの多い店には従業員も集まりませんから、「人手不足→店舗レベル低下→売上減少」と、負のスパイラルに陥るのです。
ただし、カスタマーハラスメント(カスハラ)となると話は別。もはや「接客の問題」ではなく、深刻な社会課題です。
その背景には、サービス産業の構造変化、地域社会のストレス増大、そしてコンビニという業態が背負わされてきた「過剰な公共性」があると考えられます。
ローソン・カスタマーサポート推進室で責任者(部長)を務めていた稲葉裕二さん(現在はクラシアン・コンタクトセンター統括本部長)にカスハラの実態を伺いました。
稲葉さんはこう語ります。「ここ数年で表面的には減っていると感じます。店頭ポスターやメディアを通じて、広くカスハラの認知が進んだことが大きいですね」
事実、企業側のガイドラインや対応マニュアルが整備されて、苦情を受け付ける電話オペレーターの精神的負担は軽減されました。
「昔、オペレーターは一方的に電話を切ってはいけないと教育されていて、1~2時間の苦情電話に付き合わされることはザラでした。ですが今は暴言や差別的な発言があると、その時点で電話を切ってよいと、教育されています」(稲葉氏)
ところが一方で、粘着質のクレーマーが完全にいなくなったわけではありません。ガイドラインの先を読んで執拗に絡んでくる輩は後を絶ちません。彼らは機転も利き、弁も立つ。稲葉さん曰く、「推測ですが彼らは働き盛りの3~40代くらいの人じゃないですか」とのことです。
コンビニで働く外国人スタッフは、8万人を超えると言われています。こういった状況とクレーム(カスハラ含む)との相関関係についてお聞きすると、こう答えていただきました。
「いえ、分けて考えたほうがよいと思います。業務が複雑で接客の難易度も高いコンビニのバイトには、優秀な外国人が集まる傾向にあります。むしろ真面目に働いている外国人スタッフを好意的に見ているお客様も多いです」(稲葉氏)
もちろん、質の低い外国人スタッフもいます。ですが指導力に欠けるオーナーのもとでは、日本人、外国人を問わず、接客クレームは増加します。結局、そこは店によって違うということでしょう。
稲葉さんにはカスタマーサポート部門の現在地と今後について、ご意見を聞きました。
「お客様の声の8割はAIに代替されていくと思います。問合せやクレームの多くはお客様が自己解決できるようになるでしょう。まさにそういった仕組みづくりを進めている真っ最中です。ただし2割は人が対応すべきものが残ります。クレームにせよ、改善要望にせよ、これが企業にとって宝の山だと思います。これを対応できる優秀なカスタマーサポート人材の育成が必要です」
人手不足はカスタマーサポート部門のオペレーターのあいだでも起きています。DXと人材の少数精鋭化は急務ということでしょう。そのためにも、社内における部門の地位向上が必要というのが、稲葉さんのお考えでした。
もちろん、カスハラに悩まされる現場のオーナーやスタッフを守るために、本部がやるべきことはあります。ところがオーナーが対処力を身に付けることのほうが重要です。ますますオーナーに求められる経営者としての覚悟や能力が高まっていると感じました。
更新:09月30日 00:05