2025年10月10日 公開
「お金の正体を理解できたら、この屋敷ごとあげてもいい」――謎の男性「ボス」が中学生に出した課題。その答えにたどり着いた時、大人である私たちも、働く意味やキャリアの本質を問い直すことになる。ベストセラー『きみのお金は誰のため』のコミカライズから、大人が今こそ学ぶべき「お金と社会のつながり」を読み解く。
※本稿は『マンガ きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(田内学 [原作]、吉岡味二番 [漫画]、Gakken刊)の内容を一部抜粋・編集したものです。
将来は年収の高い仕事につきたい――そう考えていた中学2年生の優斗は、不思議な「お金の研究所」で、目の前に積まれた1億円を見つめていた。
「これで1億や」。しかし次の瞬間、彼はこう続ける。「しかもな、しょせんは10キロの紙切れや」。
年収、資産、役職――数字で測れる成果を追い続けてきたビジネスパーソンにとって、この問いは単純ではない。お金は本当に私たちを幸せにするのか。そもそも、お金とは何なのか。
研究所の「ボス」は子どもたちに問いかける。お金は人にとってどんな価値があるのか?
1000円札を例に考えてみよう。紙幣そのものの材料費は数円程度。一方、千円分の硬貨は重量も材料費も紙幣を大きく上回る。つまり、お金自体には価値がない。私たちが価値があると「信じている」からこそ、お金は機能しているのだ。
この事実が示すのは、お金が社会の「信用」によって成り立つシステムだということ。そして同時に、私たちの働きや消費が、その信用を支えているという真実だ。
「お金の奴隷に成り下がる」――ボスのこの言葉が優斗に気づきをもたらした。
お金それ自体を目的にした瞬間、私たちは本質を見失う。給与が高いというだけで転職を選び、やりがいよりも報酬で仕事を判断し、数字だけを追いかける。しかし、お金は手段であって目的ではない。
本当に問うべきは「何のために働くのか」「その仕事は誰を幸せにするのか」ではないだろうか。お金を稼ぐことと、社会に価値を提供することは、本来一体のはずだ。
この物語が描くのは、お金と社会のつながり、そして働く意味の本質だ。子ども向けの金融教育書として書かれた作品だが、むしろキャリアの岐路に立つ40~50代にこそ響く内容ではないだろうか。
私たちはなぜ働き、なぜお金を使うのか。その答えは、年収や役職といった数字の先にある。自分の仕事が誰とつながり、社会にどんな価値を生んでいるのか――その実感こそが、真の豊かさをもたらす、そんなことをこの本は教えてくれているのかもしれない。
更新:10月10日 00:05