2025年08月28日 公開
2026年01月29日 更新

「理想の老後」は人それぞれ、夫婦の間でもズレている場合が多々あります。どんな老後を目指すにせよ、まずは夫婦間での話し合い、さらには家族間での情報共有が必要ではないでしょうか。現役のFPとして、数多くのミドル世代のライフプランニングも行なっている高山氏に、その重要性を聞いた。(取材・構成:林加愛)
※本稿は、『THE21』2024年9月号より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
老後に向けたお金の使い方・活かし方については、そのつど夫婦で話し合って決めていくことが欠かせません。
特に「老後の住まい」をどうするかは重要テーマです。いつまで今の家に住むか、どのような住まいに替えるか、いつごろ、どんな施設に入るかなどです。
これは夫婦間の最大の「衝突ポイント」です。奥様は便利な都会で暮らしたいと考えているのに対し、ご主人はのどかな田舎暮らしを希望する、などが典型例です。
早目に話し合っておけばおくほど、そうした違いを把握できます。その際の折衷点については、柔軟に考えるのがうまくいくコツ。今、挙げた例でいうと、ご主人の希望通り田舎に住み替えつつも、その分、奥様には自由に東京に行けるだけの時間とお金の自由を保証する、など。ほかに「二拠点生活」という選択も考えられます。
なお、住み替えを考えるときは、今の家を「売った場合」「貸した場合」にいくらになるか、のシミュレーションも必要です。不動産会社、もしくは不動産関連に詳しいFPに相談すると良いでしょう。

夫婦の話し合い以上に大事なのが、子どもとの話し合いです。現在、皆さん自身が、高齢の親御さんのことで悩みの渦中にあるかもしれません。介護のこと、家のこと、遺産のことなどを「聞きたくても聞けない」方も多いでしょう。もしくは、聞けないうちに見送ってしまって、どこにどれくらいお金があるかわからず困っている方もいるのではないでしょうか。
30~40年後、皆さんのお子さん方も同じ苦労をするかもしれません。しかも、現在の高齢世代と違って様々な形の資産があるため、さらに大変になると予測されます。
例えばiDeCoは、加入者が死亡した際、申請して初めて積立金を下ろすことができる仕組みになっています。申請が3年以内ならみなし相続財産としてカウントされて税制優遇を受けられるのですが、あったこと自体知らなかったり、手続きに手間取ったりして「遅刻」することもありえます。ですから自分の老後のビジョンや死後の相続など、「話しづらい話」を今のうちにしておきましょう。
中でも重要なのが介護の問題です。子どもの世話になろうと考えている場合、子どもは実家に通える場所に住む必要もありますし、結婚や仕事にも影響してくるでしょう。自分たちですべてを完結させる心づもりだとしても、公的サポートや施設入居などにかかるお金も見積もったうえで、「そのためにこれだけの資金を、この方法で用意する」という情報を伝えておくことが大事です。
資産状況や遺産についても情報共有しましょう。死後に確認できる形で書いておくことに加え、対面でもきちんと伝える機会を持ちたいところです。
親の心づもりがわかっていると、子どももライフプランニングがしやすくなります。自分の子ども(皆さんから見て孫)の教育をどうするか、家を買うか否か、といった大きな選択に関するモチベーションも、大きく変わってきます。
その意味で言うと、遺産を遺す代わりに「贈与」をするのも一つの手です。これから結婚して子どもができて、使うお金がどんどん増えていく時期に親からお金を受け取れたら、子どもにとってのメリットは多大です。相続よりも税金は高くなりますが、年間110万円までは非課税です。この額を超えないように、小分けして子どもの口座に移転していくとスムーズです。
ちなみに、複数の民間機関の調査に基づくと、今の日本の遺産の平均額は3000万円強に上ります。富裕層が平均値を引き上げている面もありますが、多くの人が「使わずに」世を去っていく傾向があることは否めません。必要以上に節約してしまうのは、心配性の日本人らしい行動とはいえ、いささかもったいない話でもあります。
「子どもに遺したいから」など、本人も納得したうえでなら良いのですが、「使いたいが、不安で使えない」方が多数派ではないでしょうか。アメリカでベストセラーとなった『DIEWITHZERO』という、お金の使い切り方を説く本が、大きな反響を呼んだことから考えても、本音のところでは皆、お金を使いたいのでしょう。
お金と向き合うことは、その第一歩です。今どれくらいあるか、どう使っているか、今後どうなるか......ということをきちんと整理しないと、不安ばかりが膨らむもの。冒頭に述べたように、「どのような老後を送りたいか」を5年刻みでイメージし、そのためのマネープランニングをしましょう。
使って良いお金・置いておくお金を分け、お金をかけたいところ、かけなくてよいところを明確にするのが肝です。50代の皆さんは、その絶好のタイミングにいます。ぜひ万全の態勢で「転換点」を迎え、悔いのない老後を送りましょう。
【高山一恵(たかやま・かずえ】
ファイナンシャル・プランナー(CFP)/Money&You取締役
中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)など書籍100冊、累計190万部超。1級FP技能士。住宅ローンアドバイザー。
更新:09月05日 00:05