2024年03月06日 公開
不動産投資における大きなリスクである入居者の家賃滞納。そのリスクを軽減してくれるのが、「家賃保証」というサービスだ。その草分けであるフォーシーズ(株)は、「どんな状況でも切れない保証」を20年以上にわたって提供し続けてきた。
同社の丸山輝社長は、「住まいをめぐる社会課題に取り組むことは、保証業界全体の役割だ」と語る。(取材・構成:林加愛、写真撮影:まるやゆういち)
――不動産物件を購入し、入居者から家賃を得る「不動産経営」は、ビジネスパーソンの間でも関心の高い投資法です。ただ、リスクが怖い、という声もよく聞きます。
【丸山】そうですね。不動産経営のリスクで最も大きいのは空室や家賃滞納でしょう。オーナー様の多くはローンを組んで物件を購入されますから、家賃が滞れば返済が危機に瀕します。そんなときのセーフティネットが、当社のような「家賃債務保証会社」です。
――家賃債務保証とは、何でしょうか。
【丸山】ひと言でいうと、「肩代わり」です。当社の場合は、入居者様から年に1回「保証委託料」を受け取り、滞納が発生したときは金融機関の3営業日以内に、オーナー様に家賃分の現金を全額お支払いしています。
――それは安心ですね。我々は不動産投資というと、「仲介会社」や「管理会社」をイメージしがちですが、保証会社はそうした会社とは別なのですか?
【丸山】はい。仲介会社は物件購入の前、すなわち物件を紹介して契約を取り結ぶ会社です。対して管理会社は、購入後の入居者募集やトラブル対応、清掃や修繕など、管理全般を請け負う会社です。
――その中で保証会社は、いつ、どのようにオーナーとの関わりが始まるのでしょう。
【丸山】管理会社から委託を受けるケースが多いですね。大手の管理会社が系列子会社の保証サービスを提供したり、仲介業者が関わりの深い保証会社を勧めることもあります。一方、勧められた保証会社に不安があるときは、オーナー様が保証会社を指定することもできます。
――不安がある保証会社もあるのですか? 良し悪しを見分けるポイントは何でしょう。
【丸山】保証会社の契約書で注目していただきたいのが、保証契約の解除要件です。「このような事態になったら保証しません」という条件が多すぎる、つまり、保証が「すぐ切れる」会社は気をつけたほうがよいでしょう。
――逆に言うと、保証が切れにくいほど安心なのですね。フォーシーズの場合は?
【丸山】当社の最大の特色が「保証が切れない」ことです。入居者様が破産されても、逮捕されても、死亡されたときでさえ、保証は続きます(上図参照)。
――あらゆる事態で肩代わりをすると、負担も多大では?
【丸山】そこはご心配要りません。ノウハウの蓄積はもちろんですが、当社では徹底した業務の内製化と見える化を行ない、早期に不払いのお客様をフォローすることでカバーできています。
さらにオフィスは最小限に簡素にするといった様々なコスト対策を実行し、業界トップクラスの健全な財務内容を維持しております。それにより多くの管理会社、オーナー様にご支持いただいております。
――ちなみに、コロナ禍の影響はどうでしょう。2020年以降、保証業界にも様々な変化があったのでは?
【丸山】コロナ禍発生直後は、政府の給付金や金融機関の「ゼロゼロ融資」等によって入居者様が支えられ、保証会社の負担はむしろ減りました。そうした流れを見て、他業種からの新規参入も増えたくらいです。
しかし現在はそうした措置が終わり、入居者様は法人・個人ともに逆境にさらされているケースもあります。突然の倒産や失踪などが増え、いよいよ保証会社に頼るときだと思っていたら、「そういうケースは保証の対象外です」などと言われてオーナー様が困られている、という話もよく耳にします。
――保証の「切れなさ」がさらに重要性を増していますね。
【丸山】そうです。本来、そうした厳しい事態でこそ保証が必要なはず。 当社ではオーナー様に安心を提供すると同時に、お困りの入居者様に対しても、生活支援制度の紹介や食糧支援など、様々なサポートを行なっています。
――フォーシーズでは、災害等で住まいを失った方の支援も行なっているそうですね。
【丸山】現在、元日の能登半島地震で被災された方々への入居支援を受け付けています。これまでも震災のみならず、豪雨災害や、ウクライナ難民の方々に対しても同様の呼びかけを行なっており、微力ながらお役に立っています。
――住まいの保証には大きな社会的意義がありますね。
【丸山】はい。住まいをめぐる社会課題に取り組むことは、保証業界全体の役割だと思います。その点でいま、業界が憂慮しているのが孤独死問題です。ご高齢の単身者が亡くなられたあと、その部屋が「事故物件」となって買い手がつかなくなるケースが年々増えているのです。
――今後、多死社会に突入すれば、さらに激増しますね。
【丸山】明らかにそうなります。この問題を解決するには、行政との連携が不可欠です。
――2021年から、保証会社も複数加盟する団体「全国保証機構」の理事長も務められていますね。
【丸山】同機構からも意見を提出し、議論を進めています。身寄りのない方のサポート体制、遺された荷物の扱いなど、内容は多岐にわたります。また、「事故物件」という日本独特の考え方を変えたい、という意見も出ています。
――事故物件という概念は、日本だけのものなのですか?
【丸山】はい。欧米では住宅の寿命が日本より長く、必然的に多くの部屋が「いわくつき」になりますが、それを気にする意識は希薄です。日本人が忌避感を払拭することで、日本の住まいはもっと持続的に活用できるようになると考えています。
――それにしても、深刻な場面との関わりが多いお仕事だと気づかされます。
【丸山】確かに。いまお話ししたような生死にまつわることでなくとも、「不払い」という事態だけでも深刻です。オーナー様が直接交渉したり訴訟の手続きをしたりするのは多大なストレスですから、我々がそこを一手に引き受けるわけです。
当社は、「人が煩わしいと思うこと、やりたくないと思うことを率先して行なう」という企業理念を掲げています。社員は皆この理念に共感して入社してくれますし、入社後も事あるごとにこの理念を伝えています。
別の視点で言うと、やりたくないことをしてくれる存在へのニーズは、過去も現在も未来も消えない、普遍的なものだということです。当社はそれを担うことに誇りを持っています。今後もこの気持ちを携えて、世に貢献していきたいですね。
更新:10月14日 00:05