現政権は「貯蓄から投資へ」というスローガンを打ち出し、国民が資産を少しでも投資へとシフトするよう促している。しかしそれでも、投資に対して今なおネガティブなイメージを持ち、いまだに始められていないという方も多いだろう。そこで本稿では、ファイナンシャル・プランナーの菱田雅生氏が初心者でも損をしにくい「投資信託」について解説する。
※本稿は、『THE21』2023年9月号特集「インフレ時代の『お金』の新常識」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
※本稿は2023年7月時点の情報に基づき、投資に対する著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。
投資信託とは、ひと言でいえば「金融商品のパッケージ販売」。運用のプロが、大勢の人から少しずつ集めたお金をもとに、国内外の様々な金融商品に分散投資する仕組みです。
これを利用するメリットは主に3つ。1つは、少ない金額から買えることです。最近の投資信託には、100円から買えるものも多くあります。いくらリスクは低いと言われても、投資に大金を投じるのは不安......という方にも、お勧めできる商品です。
2つ目は、プロに「おまかせ」で運用してもらえること。知識や経験のない初心者や忙しい人にはぴったりと言えます。
そして3つ目は、簡単に分散投資ができること。1つの投資信託に、何百という銘柄の株式や債券が含まれています。たった100円しか買わなくても、その100円が細かく分割され、対象の株式や債券にまんべんなく投資されるのです。分散投資はリスク回避のための鉄則。少額でも十分に資金を分散させられることは、非常に大きな魅力です。
また、資産運用の世界では、インフレ時はお金の価値が下がるため、資産を「モノ」に変えるべき、と言われます。資産に占める現金の割合を抑え、株式や不動産、ゴールドなどの割合を増やすべし、ということ。ですが、初心者がいきなりそうしたものに手を出すのは、少々勇気が要りますよね。
実は、この点でも投資信託は優秀です。株式や現物資産はもちろん、不動産を投資対象にした投資信託も豊富にあります。
もし円安が不安なら、あらかじめ外国の株式や債券を含むものを買っておくことも、有効な自衛策になるでしょう。
投資信託には、大きく分けて「インデックス型運用(パッシブ運用)」のものと「アクティブ型運用」のものがあります。
インデックス型とは、「日経平均株価」や米国の「S&P500」など、市場の動向を示す指標と連動するように作られた投資信託です。指数に合わせて機械的に動くため、人の手が介入する場面はほぼありません。手数料も低く、無難な運用が期待できます。
アクティブ型はその逆で、プロが手間暇かけて売り買いし、インデックス型以上のリターンを目指すもの。ただ、専門家が常時市場に張り付く分、手数料は高くなりますし、必ずインデックス型以上のリターンが得られるわけではありません。
どちらを選ぶべきかと聞かれれば、初心者にはインデックス型が無難です。市場と連動して値動きするため、長期投資で損をする可能性は低いでしょう。
一方のアクティブ型は、ある程度投資に慣れ、リスクを取ることに納得できた方向けです。
私がこの4月に調べた限りでは、過去1年・過去3年の双方でインデックス型を上回るリターンを出せたアクティブ型の投資信託は、全体の半分程度でした。
つまりもう半分は、高い手数料を取りながらインデックス型以下の利益しか出せなかったのです。商品の特徴や実績を調べ、見極める自信があるなら、トライしても良いでしょう。
なお、投資信託では、手数料(信託報酬)の影響が想像以上に大きくなりがちです。どれだけ魅力的でも、基本は「手数料が年率1%を超えたらNG」と考えましょう。運用益はプラスなのに、手数料のせいでマイナスに......なんて事態もあり得ます。
(『THE21』2023年9月号特集「インフレ時代の『お金』の新常識」より)
更新:11月21日 00:05