2012年07月02日 公開
2022年12月15日 更新
『THE21』2012年7月号総力特集[プロビジネスマンの「大人の話し方」]第1部では、7人の経営者や話し方のプロに「大人の話し方」について教えていただいた。
<お話をうかがった人とテーマ(写真上から/本誌の掲載順)>
・矢野 香(現役報道アナウンサー):
「大人の話し方」があなたのビジネス人生を変える
・加藤智治(〔株〕あきんどスシロー 専務執行役員):
聞いているだけで面白い話にカスタマイズせよ
・森 正文(〔株〕一休 代表取締役社長):
相手のことを調べたり記憶する手間を惜しむな
・宮沢俊哉(〔株〕アキュラホーム代表取締役社長):
聴き手の不満や不安を1つひとつ丁寧につぶせ
・大嶋利佳(〔株〕スピーキングエッセイ取締役):
《大人の言葉遣い》細部にこだわって“成熟した大人”を示す
・野口 敏(〔株〕グッドコミュニケーション 代表取締役):
《大人の話題選び》“自分の話題”を抑えて器を大きくみせる
・重田みゆき(〔株〕エムスノージャパン 社長):
《大人の印象づくり》どんなときでも「自身のある印象」を崩さない
その話を総合し、導き出した4つのポイントをまとめよう。
総論を話していただいた矢野香氏は、『その話し方では軽すぎます!』という著書の帯にある写真とまったく同じ服装でインタビューの席に現われた。本のタイトルイメージに合わせた服を3着揃え、関連する取材の際はいつも身につけているという。このように、「相手に信頼感を与えるには、外見を整え、発言の内容と外見のイメージを一致させることが重要」だと話す。
重田みゆき氏も「『大人の話し方』にはノンバーバル(非言語)の要素も重要」と話す。たとえば待ち合わせの場所で立っているとき、相手の待つ部屋に入るとき、すでにコミュニケーションは始まっている。重田氏には外見から大人らしくみせる方法をうかがったが、「自然にできるようにはならない。練習し、意識的につくる必要がある」とのこと。多くの人は、まずこの部分から錬習が必要のようだ。
矢野氏は「大人の話し方」とは、「確実性、信頼性を重視し、落ち着いた、重みのある話し方」だという。それには、正確な数字や具体例を出し、情報源を明らかにすることや、「事実と感情を分ける」ことが重要だとする。たしかに、自分の主観や感情ばかり主張するのは、いかにも子供っぽい。大嶋利佳氏も、「正しい言葉を選ぶことと同時に、いいたいことを論理的に伝える構成力が重要」という。
あきんどスシロー専務の加藤智治氏も、「ロジカルな話し方はわかりやすい」と話す。しかし、加藤氏は「それだけでは面白い話とはいえない」という。内容を伝えるだけなら、コミュニケーションとはいえない。相手の反応や行動がその先にあるからコミュニケーションなのだ。そして、相手の反応を得るには、エモーショナルな要素もうまく入れる必要がある。
前述の加藤氏、一休社長の森正文氏、アキュラホーム社長の宮沢俊哉氏と、経営者3人が揃って口にしていたのがこの条件だ。森氏はホテル営業の経験から、「まずは相手に興味をもち、それを伝えることが必須」と話す。また、それによってときには相手の機嫌を損ねそうになるほど「心臓ギリギリをえぐるくらいのボールを投げる」こともあるという。そうすることで、本気であることを示す。
宮沢氏は、講演会などでは相手に合わせた話し方を心がけているという。また、業界においてさまざまな改革を行なってきたときにも、「まずは相手の立場に立ち、共感し、敬意を払うことから始めた」。相手を動かすためには、「これを実現したい」という確固たる思いと同時に「どうしたら相手もそれをやりたいと思えるか」ということを考えることも必要なのだ。
森氏は、自分をよくみせようとしてはいけない、と話す。失敗したくないという気持ちが強くなって、相手の話に対して上の空になるなど、肝心の言葉のキャッチボールがうまくいかなくなるからだ。
話し方講師の野口敏氏も、「知ったかぶりや自慢話など、自分を大きくみせようとして話題を選ぶのは逆効果」と話す。相手の気持ちを無視して一方的に話すことになり、かえって狭量な人間だと思われてしまう恐れがある。
逆に、ありのままの自分をみせる「自己開示」は効果的。相手の気持ちに寄り添った話であれば、たとえ失敗談を話したとしても、かえって器の広い人だと思ってもらえる。それは、「この人なら、自分の気持ちを理解してくれる」という信頼感にもつながるだろう。自分の弱みをみせられる人こそ、一目置かれる存在なのだ。
更新:11月22日 00:05