2023年03月26日 公開
2023年03月29日 更新
「自分の意見を強く主張したらわがままだと思われそう」「本当は嫌だけど、断ったら後で面倒なことになりそう」……「自己主張」は意外と難しいもの。
そこで注目されているのが「アサーティブ=相手との関係を良好に保ちつつ、自分の意見をしっかり主張する対話スキル」。その第一人者に、基本的な考え方と明日から実践できるスキルを指南してもらった。
※本稿は、大串亜由美著『[新版]アサーティブ「嫌われない自己主張」の技術』(PHPビジネス新書)の一部を抜粋・再編集したものです。
言えないこと、言いにくいこと。仕事をしていれば、あると思います。でも、仕事である以上、相手が嫌がることも言わねばならないし、こちらの主張も通さなくてはなりません。
例えば、仕事が遅れていて、本当は上司に手を貸してほしいとき。あなたならどうしますか? 遅れていると言えばきっと怒られる。そのうえ手伝ってほしいなんて、とても言えない。でも、言わないと、さらに遅れてますます迷惑……。
してほしいことを、してほしいと言う。したいことを、したいと言う。できないことは、できないと言う。やめてほしいことは、やめてほしいと言う。簡単なことのようですが、言えていない人、聞いてもらえていない人が結構います。
言えないのは、トレーニングしていないから。それなのに、「こういうことは言いにくいもの(言えなくても仕方がない)」と思い込んでいる。でも、本稿で紹介する「アサーティブ」な目線があれば、気持ち良く言えるようになるはずです。
アサーティブ(Assertive)とは、「表明する」「主張する」の意。辞書を引くと、「断言する」「固執する」といった言葉も並んでいます。でも、一方的に言い放ったり、ゴリ押ししたり、こちらの言い分を無理やり飲ませることがアサーティブ・コミュニケーションのゴールではありません。
言いたいことは自己主張してちゃんと伝える。それでいて、自分にも相手にも不満・不服・モヤモヤが残らない。だからすがすがしく握手できて、明日も気持ち良く一緒に仕事ができる──これこそが目指すべきゴールです。
私は長年、多くの企業で「アサーティブ研修」を行なってきましたが、最近は特にそのニーズが高まっていると感じます。年齢、性別、国籍、価値観の異なる人たちと一緒に働いていく、多様性と包括性が求められる今、アサーティブなコミュニケーションが不可欠だからです。
アサーティブは、すがすがしく「自己主張」する技術。ではどうすれば、それができるようになるのでしょうか。
その最も基本となるのが、どちらにもメリットがあり、両者が「WIN-WIN」になれるシナリオを見つけることです。
なぜ言いにくいのか。それは自分にだけ都合のいい話だからという場合が少なくありません。
一方、自分だけでなく、相手にも本当にメリットがある話だったらどうでしょう。堂々と伝えられるし、ちゃんと聞いてもらえるのではないでしょうか。例えば次のケースで考えてみます。
◎上司が早く決裁してくれないので仕事が進まない(でも忙しい上司に急げとは言えない)
確かに、上司に「早く決裁していただかないと困ります」などとは言いにくいですよね。それは上司への"文句"だからです。単なる文句は、言うほうも言われるほうも、気持ちのいいものではありません。
そして、文句が言いにくいのは、それが相手に「WIN」のないメッセージだから。でも、その文句も、ちょっと目線を変えれば「WIN‐WIN」の提案にできるはずです。
上司にとっての「WIN」は、その上の人から認められること。もし、上司の決裁が遅れているために仕事が滞っていることを早めに報告し、適切な対処ができたら、上司が上の人から認められることにつながります。 そこでこう提案します。
◎「早く決裁していただかないと困るんですけど」ではなく、「今日中に決裁していただければ、月内にはサービスを開始できます」
あなたの提案に「YES」と言ってくれるとは限りませんが、少なくとも相手にメリットのある提案なら、言いやすくなるはずです。
なお、大切なのは本気の「WIN‐WIN」です。自分のメリットを最大化するシナリオを用意して、つけ足し程度に相手にもメリットを渡す――そんな小手先の「WIN‐WIN」は、すぐに見破られます。
自分を大事にし、同じように相手も大事にする。このスタンスをしっかり押さえていれば、どんなに難しい状況でも「WIN‐WIN」のシナリオは必ず見つかるはずです。
更新:11月21日 00:05