2023年03月27日 公開
2023年05月24日 更新
もっとも公式な数字だからといって、無条件に信じるのも危険です。たとえば世界七不思議の1つである「万里の長城」について話をしましょう。
以前は東端から西端まで約8851キロメートルということでしたが、中国国家文物局が、2012年に、総延長距離は2万1196.18キロメートルであると発表しました。
一挙に倍以上増えたのも変ですが、2万1196キロメートルという数字は普通に考えてもおかしいとしか思えません。というのは、地球の円周は約40000キロメートルですから、万里の長城は地球の円周の半分以上の長さがあるということになります。
中国は昔から「白髪三千丈」(白い髪が伸びて約9キロの長さになったという譬え)という言葉があるほど、何でもやたらと大袈裟に言う国ですが、いくらなんでも2万キロメートルはないでしょう。いったいどういう計算をすれば、こんな数字になるのでしょうか。
もっとも「白髪三千丈」の譬えも、人間の髪の毛を10万本と考え、白髪1本15センチ×10万とすれば、総延長15キロメートルになり、3千丈(約9キロメートル)の譬えもおかしくないという論法があるそうですが、もしかしたら万里の長城も中国独特の計算方法があるのかもしれません。
私の勝手な想像では、万里の長城はせいぜい3000キロメートルくらいではないかという気がしますが、これでもとんでもない距離であるのはたしかです。北海道の最北端の稚内市から九州最南端の鹿児島県の佐多岬まで直線距離で約1900キロですから、その凄さがわかります。
ちなみに1900キロは直線距離ですから、ほとんど海の上です。稚内から鹿児島まで車で行くとすれば、途中、フェリーを使って最短で約2700キロくらいだそうです。
まあ、実際のところはどれくらいあるのかわからない万里の長城ですが、現在はそれがどんどん消えていっているということです。というのは、長城の近隣住民が家を建てるのに長城を壊して、そのレンガを使っているからです。
また文字が刻まれた石やレンガは高く売れるということで、観光客に土産物として売っているそうです。そのため万里の長城は近年になって3割ほどが消えたといわれています。私の見るところ、今世紀中に万里の長城は消滅するのではないかと思っています。
ところで以前は「万里の長城は、宇宙から肉眼で見える唯一の建造物」といわれていました。これは中国の教科書にも載っていました。でも、2003年に中国初の有人宇宙船「神舟五号」に搭乗した宇宙飛行士が「万里の長城は見えなかった」と発言したため、中国の教科書からは削除されました。
たしかにいくら長くても幅はせいぜい10メートルほどですから、万里の長城が見えるくらいなら、東名高速道路や新幹線の線路も見えるでしょう。ちょっと考えれば当たり前のことですが、実際に「見えなかった」と発言するまで教科書に載っていたというのは、間の抜けた話です。
ともかく、正確な数字を挙げて見てみると、具体的にイメージしやすいということがあります。特にスケールの大きな話をする時は、できるだけ数字を正確に言うようにしましょう。話のリアリティがまるで違ってきます。
更新:12月10日 00:05