最後に、プライベートの習慣についても、少しお話ししておきます。認知症を防ぎ、生涯主体的かつ活発に生きるためにお勧めしたいのが、「家計への関心を高めること」です。
50代の方の中には、家庭のお金の管理はすべてパートナーに一任し、普段は気にも留めていない、という方も少なくないと思います。しかし、お金に対する興味や関心を保つことは、「社会とのつながり」を保つことに直結する行動です。
実際、認知症医療の現場から見ても、高齢になっても元気な人の多くは、どこかお金にうるさいもの。
「任せているから」と思考停止するのをやめ、今の自分にどのくらいの収入があり、税金はいくら引かれているか、月々の家庭の収支はどの程度かなど、あらためて確認しておきましょう。これまで気づいていなかった改善点が見つかる可能性もあり、一石二鳥です。
また、これは私自身の習慣なのですが、「A4一枚アウトプット読書術」もお勧めです。小説やビジネス書はもちろん、医療の専門書でも、何か本を読んだら、その感想を「紙一枚」にまとめてみてください。
内容は「読んだ日時や場所」「仕事に役立ちそうな情報」「印象的だった表現やフレーズ」など、ごく基本的なことで構いません。
ですが、これらを箇条書きでまとめる習慣をつけると、次第に「読み方」が洗練されてきます。決まったアウトプットを前提にするため、効率良く要点を拾い、「ワーキングメモリ」を節約しながら上手にインプットすることができるのです。
しかも、まとめたものをクラウドで管理しておけば、いつでもその情報にアクセスが可能です。つまり、もう同僚との雑談で「この間読んだナントカっていう本に、確か、似たような話があってさ」などと、ついあやふやな話を展開してしまうこともなくなるのです。
そのうえ、過去のまとめに触れるたびに記憶がよみがえり、ワーキングメモリの「記憶を呼び出す力」が鍛えられます。まさにいいことだらけの習慣です。
ぜひ、今回紹介した方策を、1つでも多く生活に取り入れてみてください。小さな変化も、数十年後にはきっと大きな差を生んでいることと思います。
【長谷川嘉哉(はせがわ・よしや)】
1966年、愛知県生まれ。祖父が認知症になった経験から医師を志し、名古屋市立大学医学部を卒業して夢を実現。開業以来、現在までに6万件以上の訪問診療を実践している。現在は医療法人を束ね、在宅生活を医療・介護・福祉のあらゆる分野で支えるサービスを展開。著書に『一生使える脳』(PHP新書)、『一生稼げる脳の作り方』(KADOKAWA)などがある。
(『THE21』2023年1月号特集「40代・50代から衰える脳 伸びる脳」より)
更新:11月22日 00:05