振り返ると、改革を始めた頃の私には、まったく余裕がありませんでした。学校を出たばかりの新人たちに「自分と同様にできる」ことを求め、半ば押し付けるようにして、仕事を任せていたような気がします。
今でこそ私と職員との距離も近く、「個性を活かす」「楽しんでほしい」という指導方針を打ち出せていますが、それもそんな改革初期に、新人職員たちが一気に基礎力を身につけてくれたからできたこと。
そう考えると、「あんな状況だったからこその無茶」も、実はプラスだったのかも、とも思います。今もう一度そんな状況に陥ったとしても、館長室まで気軽にお菓子を食べに来るようになった職員たちに、そんな働き方をさせられる自信がありません(笑)。
私がリーダーとして成長し、丸くなり、その人に合った仕事を見抜けるようになるまでの時期が、ちょうど職員たちが仕事の基礎力を一心不乱に身につける時期と重なってくれた。館存続のために一心不乱になる必要があった時期も、ちょうどそこに重なった。
この奇跡的な噛み合い方も、改革成功の大きな要因でしょう。ハマスイは、本当に「人」同士の相性の良さに支えられた水族館だと思います。
職員の年代も近く、今ではどこか「大学のサークル」的な雰囲気があるようにも感じているくらいです。
若い職員を採用する際は、学力や経験も、見るには見るけれど、あまり重視していません。面接でも、慣れがものを言わないよう、わざと変な質問や雑談を交えて、その人の「人柄」を見る工夫をしています。
今いる職員に限っても、生き物と何ら接点のない学校から来た子や、採用後すぐに入退院を繰り返して解雇寸前になり、私がそれを食い止めて後々大活躍してくれた、という子もいます。
抽象的ですが、どこかに「おっ」というフックがあって、あとは向上心と人としての基礎があれば、残りは働きながら身につくのです。そのせいか、ハマスイには「ブレーキ」役がいつもいません(笑)。
もともと、水族館や動物園は、常に生き物たちの生死と隣り合わせの職場です。
緊急時にマニュアルになんて縛られたくない、という子たちにこそ向いているはず。いかに足並みを揃えるかではなく、純粋に中身だけを評価してあげたいですね。
更新:01月15日 00:05