2022年03月10日 公開
2024年12月16日 更新
不動産オーナーにとって空室リスクに並ぶリスクが家賃滞納だ。予定通りに家賃が入ってこなければ、物件の購入のために組んだローンの返済が滞ることにもなりかねない。
そんなリスクを軽減する「家賃保証」のビジネスを展開するのが、フォーシーズ株式会社。オーナーにも入居者にも寄り添った姿勢できめ細やかなサポートを行なうフォーシーズが、サービスを通して目指すものを、社長の丸山輝氏にうかがった。
※(取材・構成)林加愛/(写真撮影)長谷川博一
不動産経営に伴うリスクといえば、空室や家賃滞納。ローンを組んで物件を購入した後、月々の家賃が入ってこなければ、返済もままならなくなる。
そうした不安から、不動産投資に二の足を踏む人は少なくないだろう。そのリスクに対応するのが、「家賃債務保証会社」だ。入居者から保証委託料を受け取り、もしものときは、入居者に代わって全額保証を行なう。
「家賃の滞納があった場合、当社では金融機関の3営業日以内に、オーナー様に送金をしています」
と、フォーシーズ㈱の丸山輝社長は語る。同社は「人が煩わしいと思うこと、やりたくないと思うこと」を率先して行なうことで社会に貢献するという企業理念を掲げている。
「不払いという事態は、オーナー様・入居者様双方にとってストレスフルなものです。直接話し合えば感情的になりやすく、収拾困難にもなりがちです。そこで、我々が間に立ちます。どの局面においても、同じ社員が最後まで、責任を持って執り行います」
その「局面」は一様ではない。入居者と交渉し、物別れとなれば裁判へ。勝訴して解約が成立しても、荷物が残されたままになるケースも多く、その搬出や預かりも同社が請け負う。
「一切アウトソーシングをしないこと、そして保証が『切れない』ことが当社の特色です。長期の未納、入居者様の破産や逮捕、死亡においても保証は続きます。そうした場面こそ、オーナー様にとって保証が必要なはずですから」
入居者へのサポートも手厚い。滞納者のもとへはカウンセリングスタッフが訪問し、場合によっては生活支援制度の紹介や、食糧支援を行なうこともある。
「当社の審査承認率は約98%。法人用の高額物件から、個人用の比較的廉価な物件まで幅広く取り扱い、できる限り多くの方をお引き受けする方針をとります。資金力のあるお客様とお取引をしつつ、お困りのお客様を支えるサービスは、コロナ禍以降いよいよ二極化する社会において、さらに意義を増すだろうと考えています」
一方で、丸山社長が危惧する事態もある。
「契約の当事者となるのはオーナー様・入居者様・保証会社の三者ですが、保証会社の選定を不動産仲介会社に任せているオーナー様も多い状況です。ところが、保証会社が仲介会社に多額の手数料やキックバックを支払うといった営業を行なっている場合があります。そうした保証会社では、いざ延滞が起きた場合の保証内容が薄かったり、保証が切れやすい契約になっていたりすることがありますが、契約の当事者ではない仲介会社は、契約内容よりも自社へのキックバックの大きさで保証会社を選んでしまうことがあるのです。オーナー様には、保証内容の充実した会社を、できるだけご自身で選んでいただきたいと考えています」
フォーシーズは「社会貢献企業」である、と語る丸山社長が、家賃債務保証業に携わるようになったのは21年前のこと。
「もともとは古物売買を取り扱う店を経営していたのですが、あるとき知人の不動産業者から、倒産した保証会社の荷物買取りを依頼され、初めてこの事業を知りました。そのとき考えたのは、これは『人にしかできない』ということです。社会では様々な面で機械化が進み、人間関係も希薄化すると予想される中、手厚いコミュニケーションを伴うビジネスは間違いなく伸びる、と思いました」
同時に決意したのは、不払い家賃にまつわる交渉や手続きといった仕事を「健全に」行なうことだった。
「未成熟な業界でしたが、私は保証会社をまっとうに展開し、業界の文化を変えていくことが自分の使命だと考えました。本来、この仕事には『力ずく』の出番などないはずなのです。丹念に対話し、それでも無理なら法で解決する、という道筋があるからです」
しかし創業当初は、その志がなかなか伝わらず苦労した、と振り返る。
「経験者を採用すると、いくら言っても『従来の業界風』の態度をとってしまうのです。そこで新卒採用に注力し、人材教育に取り組みました。その甲斐あって、現在の社員は皆、理念を理解してくれています。カウンセリングスタッフは制服を着用し、名札を付けて訪問。見た目も中身も健全に仕事を行なっています」
現在も、同社は人材教育に力を注いでいる。
「理念を浸透させるには、信頼関係が第一です。管理職には、『部下に仕事を覚えて貰うより、まず信頼関係を築くこと』と伝えています。」
カウンセリングスタッフと入居者とのコミュニケーションに関しても、事例ごとに細かくフィードバックを行なう。
「大事な場面での会話は必ず録音し、もしトラブルが起これば、聞き直して分析します。揉めてしまったということは、スタッフ側が丁寧に接しているつもりでも、どこか問題があるもの。そうした例は全社で共有して注意を促し、スキルの向上を図っています」
育成と同様、同社が熱心に取り組んでいるのがダイバーシティの推進だ。
「当社では管理職の約40%を女性が占めており、外国の方やLGBTの方の採用・登用も積極的に推し進めています。今後は、障がい者の方が働きやすい環境もさらに整備したいところです。多様な立場の人が共に働くことは、さまざまな境遇のお客様への配慮や思いやりへと、必ずや活かされるでしょう」
保証事業を発展させるために力を惜しまない丸山社長。その努力は、会社の外側にも向けられている。2021年には、国内で保証事業を営む企業の団体「全国保証機構」の理事長に就任した。
「この団体は、保証制度・保証サービスの健全な発展と普及を目的としています。『賃貸保証機構』という名でスタートした団体ですが、現在は賃貸保証業に限らず、様々な分野の保証会社に参加していただき、ノウハウの共有や自主ルールの制定を図っています」
医療費用保証、介護保証、養育費保証など、参加企業のジャンルは幅広い。また、同機構は、国や地方公共団体との連携も深めている。行政と保証会社が協力することで、社会的に不利な立場にある、多くの人を支えられると語る。
「例えば賃貸業の場合、全国の市区町村から依頼を受けて、高齢の方々や障害を持つ方など、不自由を抱えて住まいに困られる方の保証を行ないます。保証会社の働きにより、苦境にある方にも住む家が確保され、オーナー様も安心して部屋を貸せます。こうして、皆が安心して生活できる社会をつくることは、企業や個人の方々の投資活動においても、きっと追い風となるでしょう」
更新:12月22日 00:05