2022年01月07日 公開
鮒鶴京都鴨川リゾート
――その後、現在に至るまで、方針は変わらず?
【他力野】創業した2005年から2014年までの10年間は、直営を中心にして、一部、コンサルをしながら、自分たちがどこまで通用するのかを試してきました。そのために、社内からかなり反対されるような難易度の高い物件にも挑戦してきました。
そして、2015年からの10年間は、社会課題の解決に、より重点を置いています。もちろん、歴史的資産の保全自体も社会課題の解決なのですが、施設という「点」からエリアという「面」へと取り組みを広げています。それまでは民間が所有する施設を中心に扱っていましたが、国や神社仏閣が所有する「売り買いができない不動産」も含めた、エリア全体への取り組みです。
前半の2019年までで、まちづくりの実績を作り、ポジションを築いて、期待される存在になることを目指しました。そして、私自身、内閣官房観光戦略実行推進室歴史的資源を活用した観光まちづくりユニットのメンバーに入らせていただき、観光庁や文化庁、日本政府観光局、京都府や大洲市などの自治体に出向している社員もいます。そうして、法律も含めて、当社だけでなく、すべての方々が歴史的資産の利活用を進められる環境整備にも取り組んでいます。
――法的整備と言うと?
【他力野】例えば、建築基準法は1950年にできた法律で、歴史的建造物が建てられたときにはありませんでしたから、歴史的建造物の多くは現在の建築基準に適合しない「既存不適格」になっています。修繕する場合は、1棟ずつ、文化財として価値が高いものは文化庁と、それほど高くないものは自治体の教育委員会と協議する必要があります。
もしくは、今の建築基準に合わせて作り変えるという方法もありますが、それは歴史的建造物がなくなるということです。実際、そういう決断をしているケースも多くあります。
けれども、皆、できることなら残したいと思っています。残しやすくするためには、既存不適格の捉え方を変える必要があります。
――今、特に力を入れていることは?
【他力野】1つは、城泊です。お城に泊まるだけでなく、お城をアイコンにしたまちづくりを各地で進めていきたいと思っています。
もう1つは、そこから派生して、自然遺産や、伝統産業や伝統文化などの無形文化を活かしたまちづくりも進めていきたいと思っています。
伝統産業は跡継ぎがいないとよく言われますが、生活が成り立たないから若者が跡を継がないんです。儲かる産業、将来がある産業にすれば、跡継ぎは現れます。
さらに、観光はきっかけにすぎず、街が活性化すれば暮らす人や事業者が増えます。すると、教育やエネルギーの循環、お金の循環など、持続可能な仕組みを地域に作ることもテーマになってきます。そうしたことを手がける企業の経営支援もしていきたいですね。
更新:11月24日 00:05