2021年11月30日 公開
2023年02月21日 更新
戦略のある会社とない会社で、何がそんなに変わるのか。ここではA社、B社2つの会社を比較して考えてみたいと思います。
A社は"目標はあるが、達成に向けたプロセスは社員任せの会社"、B社は"目標はあり、達成するための戦略を明確に全社員に示し、行動させることができている会社"です。この2社の組織の状態が、社員の「意識」「行動」にどう影響するか。さらに「成果」にどんな差が出るかをみていきましょう。
まず、意識については、A社B社ともに目標は明らかになっています。つまり、どちらにも「目標を達成しなければいけない」という意識はあり、明確な差はないといえます。しかし、行動については非常に大きな差が出ます。社員がそれぞれ自分で考えて動くA社では、どうしても方向がバラバラになってしまいます。
さらに戦略については方向性が示されていないので、社員は自分の仕事しか見ず、まわりに意識がいかないということになりがちです。各自が「ああでもない、こうでもない」と自分勝手に行動してしまうために、力が分散されてしまう可能性もあります。
一方、B社は戦略が明確なので、それに沿って全員が動くことができます。社員のベクトルが同じ方向を向いているだけでなく、戦略に基づいて自ら考え、動こうとするので、新しいアイディアや工夫も生まれやすい環境です。
さらに目標達成に活かそうと、社員同士が情報を交換したり、成功・失敗体験を共有したりしようとする好循環も期待できます。このように2つの会社の差は歴然としています。目標が達成しやすく、生産性の高い組織がどちらかは言うまでもないでしょう。
戦略の重要性を理解していただけたと思います。しかし、もう1つ中小企業に足りないものがあります。それは「実行力」です。
戦略を学ぶ経営者は多いですが、そこに時間をかけすぎて「戦略を理解する」ところで終わっているケースが非常に多いのです。実際、行われている研修や関連の書籍、コンサルタントのコンサルティング内容も、戦略の理論や立案の手法に関することがほとんどだというのが現状です。
しかし、これまで560社以上の中小企業の戦略立案、実行推進に携わってきた経験から言えるのは、戦略のうち約70%はどの会社にも共通であり、自社の状況に応じて選択、実行すべき戦略は20〜30%、自社の状況に応じたオリジナルで実行すべき独自戦略は10%未満だということです。
【中小企業に必要な戦略メニュー15】
・顧客戦略
【戦略1】顧客情報管理・活用の仕組みづくり
【戦略2】顧客育成の仕組みづくり
・営業戦略
【戦略3】 営業プロセスの標準化
【戦略4】 営業ツールの整備
【戦略5】 販促・プロモーションの推進
・人材戦略
【戦略6】人事評価制度の導入・運用
【戦略7】要員計画にもとづいた戦略的採用
【戦略8】幹部・リーダーの計画的育成
・組織戦略
【戦略9】会議・コミュニケーションルールの整備
【戦略10】マニュアル・手順書の整備
・IT戦略
【戦略11】ホームページ・SNSの活用
【戦略12】社内システムの整備
・商品戦略
【戦略13】商品企画・開発プロジェクト
【戦略14】商品ランク分類
【戦略15】生産計画と実行
具体的には【中小企業に必要な戦略メニュー】15のうち、どの中小企業にも必須の戦略が1〜9、11の10項目、自社の状況によって選択・実行する戦略が10、12〜15の5項目となります。大切なのは戦略を実行していくこと、戦略のPDCAをまわし、計画的に推進していくことです。
それこそが、中小企業の生産性を上げ、稼ぐ力を高めていくことにつながります。そして、日本の企業の99.7%を占め、日本の労働人口の約7割が働く中小企業が戦略的経営に取り組むことで、日本全体の生産性を高めることもできるのです。
山元浩二(やまもと・こうじ)
日本人事経営研究室株式会社代表取締役
1966年、福岡県飯塚市生まれ。組織成長・進化の“仕組み"づくりコンサルタント。成果主義、結果主義的な人事制度に異論を唱え、10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。会社のビジョンを実現する人材育成を可能にした「ビジョン実現型人事評価制度」を日本で初めて開発、独自の運用理論を確立した。導入先では9割を超える社員が評価について納得しているという結果も出ており、経営者と社員双方の満足度が極めて高いコンサルティングを実現。その圧倒的な運用実績が評判を呼び、人材育成や組織づくりに失敗した企業からのオファーが殺到している。業界平均3倍超の生産性を誇る自社組織は、創業以来、19期連続増収を果たし、全国的にもめずらしい人事評価制度専門コンサルタントとしてオンリーワンの地位を築く。
著書に『図解 3ステップでできる! 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)、『小さな会社は経営計画で人を育てなさい! 』(あさ出版)、『小さな会社の〈人を育てる〉賃金制度のつくり方』(日本実業出版社)などがある。発行累計13万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
更新:12月02日 00:05