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有力投資家たちが注力する「気候変動問題解決」を素通りできない理由

2021年07月14日 公開

佐俣アンリ(ベンチャーキャピタリスト)

 

科学技術力の立て直しも日本の大きな課題

今の世界には、気候変動の他にも、現状では解決できていない様々な社会課題があります。

日本で言えば、労働生産性の向上が大きなテーマです。

AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の技術を駆使することで労働生産性の向上を実現すれば、労働時間の削減につながり、多くの夫婦が共働きをしながら育児をすることが容易になります。子育てしやすい環境が整えば、出生率も改善することが期待できます。

また、今後のデジタル社会の進展を見据えると、サイバーセキュリティの分野の強化も重要な課題です。この分野で日本は、アメリカなどの国々と比べると大幅に遅れています。

こうした社会課題を解決するためには、先鋭的な研究開発力を持った技術系のスタートアップをいかに増やしていけるかがカギとなります。

しかし、一般的にベンチャーキャピタルは、技術系スタートアップに対して、投資に慎重になる傾向にあります。インターネット系スタートアップと異なり、成果が出るまでに時間がかかり、投資の回収がしにくいからです。

僕らはあえて、この分野への投資を事業の核の一つに据えています。

僕らの技術系スタートアップへの投資は、社会課題の解決に結びつく先端的な研究開発を行なっている大学の研究者のところに行って、「その技術で起業しませんか」とお話をするところから始まります。

といっても、研究者自身に起業家になってもらうわけではありません。研究者には研究に専念していただき、事業会社を経営できる社長候補の人を別に見つけ出してマッチングをして、会社を立ち上げます。

普通のベンチャーキャピタルは既に起業しているスタートアップに対して投資するのですが、僕らは研究者や社長候補に働きかけて、ゼロから会社を作るところから始めるのです。

そこまでやるのは、それが地球や社会の未来のために重要なことだから。また、日本の科学技術を下支えしたいという思いもあります。

ある技術を軸に新たな事業や産業が創出されれば、それを研究するラボが大学などに増え、若くて優秀な研究者が携たずさわる機会が増えます。そこからまた新しい研究成果が生み出される、という好循環が起きていきます。

日本は、現在は数多くのノーベル賞受賞者を輩出していますが、若手や中堅の研究者を取り巻く研究環境は悪化しており、今後も世界レベルの研究成果を出し続けることが難しくなりつつあります。科学技術力を立て直すことも、これからの日本の大きな課題であり、僕らが取り組んでいきたいことです。

 

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