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芸能人の「東京一極集中」は過去の話? 急変したエンタメ事情

2021年07月13日 公開

中川悠介(アソビシステム社長)

 

大人数を動員することが成功ではなくなった

エンターテインメント業界において、これから10年で消えてしまうジャンルというものはないでしょう。いくらインターネットが発展しても、テレビやCDといったメディアにも一定のニーズがありますから、滅びることはないと思います。

ただし、これまでコンテンツを提供してきた仕組みには、機能しなくなるものがあるでしょう。

テレビやCDがメディアの中心だった時代は、大人数が、大きなトレンドを、大規模に消費していました。現在40~50代になっている方々が学生だった頃は、学校で皆が前夜に放送されたテレビ番組の話をしていて、「あの番組を見ないと話題についていけない」といったことが多々あったと思います。

しかし、今はマイクロコミュニティの時代です。皆で一斉に誰かのファンになるのではなく、各自が自分だけのお気に入りを持ち、SNSでファン同士がつながって小さなコミュニティを作っていく形が主流なのです。

今の若い人には、自分が誰のファンかを言うとき、マスメディアで活躍しているアーティストやタレントではなく、ユーチューバーの名を挙げる人が増えています。

その中にも、広く人気を集めているユーチューバーもいれば、一部に固定ファンを持つユーチューバーもいます。今後は、後者の、少人数に熱く支持されるタイプがさらに増えるでしょう。

そうなると、大人数のファンがいなければ成立しないビジネスは、転換を迫られます。テレビもCDも、また雑誌も、なくなることはありませんが、既存のビジネスの仕組みは変わらざるを得ません。

新しい仕組みが必要だということではなく、これからは仕組みで売ることが難しくなるということです。

あるコンテンツを売るのに成功した方法を、別のコンテンツに横展開しても、コンテンツごとに魅力が違い、ファンが違うのですから、うまくいきません。

タレントやアーティストも、幅広い層の大人数にファンになってもらうことを目指すのではなく、本人だけが持つ「個性」で勝負することが重要になります。

それをいかに見つけ、磨き上げるか。どのような背景と文脈で売り出していくか。

プロデュースの力量が問われると同時に、多様な表現のできる面白い時代が来る予感がします。

 

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