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コロナ禍の今こそ松下幸之助に学ぶ、「逆境の乗り越え方」

2021年06月21日 公開
2023年02月21日 更新

THE21編集部

松下幸之助

パナソニック商品を「ご愛用者登録」したユーザーに多様なサービスを提供する「CLUB Panasonic」は、去る2021年5月29日(土)にオンラインセミナーを開催した。担当講師はPHP理念経営研究センター代表の渡邊祐介。

コロナ禍を受け、様々な業種・業界が苦境に立たされる今こそ立ち返りたい、松下幸之助の考え方。いかにして逆境を乗り越えてきたかについて、幸之助本人の音声や映像を交えて講演が行なわれた。その内容の一部をご紹介しよう。(取材・構成=森末祐二)

 

世界企業を築いた松下幸之助は恵まれない環境で育った

今回のオンラインセミナーは、動画共有プラットフォームの「YouTube」を用いて、受講申込者限定でライブ配信された。以下、セミナーの内容を要約して紹介する。

1964年、かつて発行部数800万部を誇ったアメリカのフォトジャーナリズム誌の『LIFE』(2007年に休刊)で、日本に関する特集が組まれた。同年、東京でアジア初のオリンピックが開催され、世界が日本に注目していたのだ。

特集記事の中で、日本を代表する人物として、松下電器産業(当時)の松下幸之助が取り上げられた。そこで松下幸之助は、「最高の産業人」「最高所得者」「思想家」「雑誌発行者」「ベストセラー作家」であるとして、非常に高く評価されている。これを機に、松下幸之助の名は世界に知れ渡った。

これほど大成功を収めた経営者でありながら、広く知られている通り、幸之助は決して恵まれた環境で育ったわけではない。父親が資産をなくして一家は没落。小学校を4年で中退したため学歴がなく、身体は弱かった。

起業してからもお金がなく、26歳までに父母と7人の兄姉が全員亡くなるなど、まさにあらゆる不幸を背負った人生だったともいえる。

そんな松下幸之助が一代で世界的大企業を築き上げた要因として、渡邊講師は、「不況またよし」という考え方や「日に新た」という生き方がそこにあったと説明する。

 

心で不況をつくらず、「不況またよし」と考えてやるべきことをやる

2020年初頭から続くコロナ禍で、多くの産業が打撃を受けているのは間違いない。短期的に事象だけを見ればたいへんな不運であり、降って湧いた理不尽な逆境のように思える。

松下幸之助はもちろんこのコロナ禍を知っているわけではないが、世界恐慌や第二次世界大戦といった極めて厳しい試練に見舞われている。戦後の経済成長期にも、大きな不況が何度も日本経済を襲った。

そうした経験を通して、幸之助は、「不況は決して天然現象ではなく、少なからず人間がつくっている面がある」と考えるようになった。

そこで幸之助が体得したのは、「治に居て乱を忘れず」の言葉通り、好況のときから次の不況に備えて設備や資金、人材などあらゆるものに余裕を持たせておく「ダム経営」という考え方だ。

長期的に見れば、経済は好不況の波を繰り返すものであり、それを前提に経営を考えなければならない。そしてひとたび不況期に突入したときには、ひたすら堪え忍んだり、場合によっては休業したり、その間に人材育成や組織の改善に力を入れるなどしてやり過ごすのである。

あるいは事業の原点を見つめたり、志を再確認したりすることも大切だ。苦境を乗り切るために、旧来の慣習や常識を打ち破ることができるかもしれない。

このように、好況時には忘れがちで取り組めないことに取り組めるという意味において、「不況またよし」と考えることができるのではないだろうか。大事なのは、「心で不況をつくってはいけない」ということである。

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