「論理」による問題解決と、「感覚」による問題解決は二律背反のものとしてとらえられがちだが、実際にはコインの表裏のように不可分のものだと、Airbnb Japan執行役員の長田英知氏は言う。
「政治家」「戦略コンサルタント」「スタートアップ企業」というキャリアで試行錯誤するなかで、長田氏が身につけた問題解決のアプローチとは?
※本稿は、長田英知著『あたらしい問題解決』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
ビジネスで様々な問題に直面して、それらの解決に取り組むとき、過去の知識や経験、スキルでは太刀打ちできないと感じることも少なからずあります。
前例もない、頼りにできる人もいない、それでも新しいことにチャレンジして成果を出していかなくてはならない。そのようなときに共通して活用できるのが、次に述べる思考の3つのステップです。
(1)直感に基づいて「問題」を把握し、ユニークな示唆を得ること
(2)示唆に基づきフレークワークを構築し、「問題」と「解決策」を導き出すこと
(3)解決策の中から人々を行動に促す「最適解」を導き出し、適切な形で伝達していくこと
そして、この3つのポイントを効果的に実現するために活用するのが、「問題を解決するための3つのS」です。「3つのS」とは、次の頭文字を取ったものになります。
〇Sense(センス)=問題を感じ取る「直感」
〇Segment(セグメント)=問題を解決可能な課題にするための「切り分け」
〇Story(ストーリー)=課題解決に向けてメンバーを一体化させる「物語」
まず「Sense(センス)」は「第6感」と呼ばれる「直感」、あるいは「直感的な理解」を指します。「センス」は良いものを見抜く力だけでなく、おかしな部分、不自然な部分を見抜く力を与えます。この直感的な理解を通じて問題解決につながる示唆を導き出すのが、「センス」の役割になります。
次の「Segment(セグメント)」はセンスによって得られた示唆に基づき、適切な視点で問題を切り分け、本当に解決すべき課題を抽出する力です。問題から解決可能な課題を「切り分け」ていくと、その中からまず取り組むべき課題と、問題解決への道筋を導き出すことができます。
そして、最後が「Story(ストーリー)」、すなわち「物語」です。関係者全員が一致団結して、問題解決につながる課題に取り組み、成果を上げるために、全員が同じ目線で「その課題を解決することで、問題がどのように解消されるか」ということに関する共通の物語を語れるようになることです。
また、多少異なる利害関係があったとしても、小異を捨てて大同につくことができるよう、人々をモチベートするのも「ストーリー」の役割となります。
弁護士や医者、あるいはコンサルタントなど、問題解決を専門とする人々は、意識的あるいは無意識のうちに「3つのS」に従って顧客に接し、問題解決を行っています。
彼らは長年にわたる経験と知識に基づき、顧客の話から問題のありかを直感的に察知し(センス)、その問題から解決すべき課題を切り分け(セグメント)、顧客や患者などの関係者にその課題に取り組むように動機づける(ストーリー)という活動を行っているのです。
ちなみに、私が問題解決の手さばきに感動した最初の体験について紹介したいと思います。
高校生の頃、急な腹痛に襲われ、母と夜間に病院に駆け込んだことがあります。私自身は食あたりか風邪かぐらいに思っており、薬を処方されてすぐに帰宅できると思っていました。
しかし、担当した医者は、お腹のどの辺りが痛むかについて詳しく聞いたあと、私のお腹のいろいろな箇所を押してどれぐらい私が痛がるかについて確認し、血液検査と超音波検査を行ったうえで急性虫垂炎の診断を下しました。
そして母と私に、すぐに手術をしないと腹膜炎を併発する深刻な状況であると告げ、翌朝には緊急手術を行ったのです。
医者は、痛みなどの症状を訴える患者が来ると問診を行い、様々な質問を投げかけて患者の状況を把握し、そこから、直感的に患者が予想だにしない問題のありか=虫垂炎の可能性を探り出します(センス)。
次に、医者は病気が疑われる箇所を切り分け(セグメント)、その部分に集中した検査(お腹を押し、超音波検査を行う)を通して自分の考えている病気の仮説が正しいかどうかについて検証します。
そして、検査によって明らかになった課題に対する治療方針として手術を選択し、患者に結果を説明します(ストーリー)。
医者が行っている一連の流れは実際のところ、ビジネスパーソンがビジネスで生じる問題を解決するために行っていることとさほど変わりません。こうした「問題解決の型」を理解し、意識的にその型を活用していくことで、より効果的、効率的に問題を解決することができるようになります。
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更新:11月22日 00:05