2020年11月16日 公開
コロナ禍によって企業の在り方や一人ひとりの働き方は大きく変わり、見直され始めた。その中で、数年前から日本企業の間で経営上の課題としてよく聞くようになった「社員エンゲージメント」も、より一層重要視されている。
本稿ではグローバル企業ではすでに取り入れられている「社員エンゲージメント」がなぜ日本企業でも必要とされるのか、企業の業績にいかに影響するのかを多様化する日本の若者たちの現状に迫りながら考える(取材・構成:塚田有香)。
※本稿は月刊誌『THE21』2020年11月号より一部抜粋・編集したものです。
数年前から経営の現場で「社員エンゲージメント」という言葉がよく使われるようになりました。
これは、簡単に言うと、「自分が所属する組織と、自分の仕事に熱意を持って、自発的に貢献しようとする社員の意欲」を意味します。
以前、「社員満足度」が注目を集めた時期がありましたが、社員エンゲージメントは社員満足度とはまったく別の概念です。
社員がいくら満足しても、必ずしも企業の業績が上がるわけではないのに対し、社員エンゲージメントは「会社に貢献したい」という思いが根底にあるので、会社の業績につながります。社員エンゲージメントと社員満足度では、業績との相関性が異なるのです。
日本企業の業績が伸び悩む中、様々な課題が指摘されるようになりました。その中で、「自社の生産性が低いのは、社員が活き活きと幸せに働いていないからではないか」と気づく経営陣が増え始めています。
「社員の自発性や意欲を引き出さなければ、今後の成長はありえない」と考える日本企業の問題意識に対し、その答えになり得るものとして、社員エンゲージメントという概念に注目が集まるようになったと言えるでしょう。
多民族国家の欧米を本籍とするグローバル企業では、早くから経営に社員エンゲージメントの概念を取り入れてきました。
日本企業は同じ価値観を持つ人たちが集まるモノカルチャーなので、社員は序列に従い、上の人間が示した方向を目指して頑張ります。
一方、生まれ育った環境も背景も異なる人たちを同じ方向へ向かって頑張らせるためには、個々の社員の自発的な意欲や熱意、組織へのロイヤリティを引き出さなければ困難です。
だから、欧米のグローバル企業では、必然的に社員エンゲージメントを重視するようになったのです。
更新:11月24日 00:05