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市場縮小でも事業を伸ばす!「着物」業界3社の成長戦略

2020年04月16日 公開
2023年07月12日 更新

『THE21』編集部

一蔵・BuySell Technologies・いつ和、それぞれの強みとは?

 

 縮小する市場の中で、企業が業績を伸ばすことは難しい。それがビジネスの常識だろう。では、着物市場はどうか? 街中で着物の人を見かけることは少なく、縮小しているというイメージを持っている人が多いのではないだろうか。データを見ると、確かに、その通り。小規模な企業が数多くあるため正確な金額の算出は難しいものの、『きもの産業年鑑』(矢野経済研究所)によると、呉服小売市場は2008年には4,065億円あったが、2018年には2,681億円にまで落ち込んでいる。そんな中でも、事業を伸ばしている企業はある。ここでは、そんな3社を取材した。

 

一蔵――売れ残るリスクを引き受け、低価格と豊富なバリエーションを実現


写真提供:〔株〕一蔵

 

 全国に店舗を展開し、東証一部に上場している〔株〕一蔵は、1991年の創業以来、28年間で約12倍にも和装事業の売上げを伸ばしてきた。その大きな要因は、嗜好の多様化に対応した豊富なバリエーションの着物を、低い価格で販売していることにあるという。

「着物は高価なので、仕入れて売れ残った場合、小売店は大きな損を抱えてしまいます。そこで、小売店はメーカーから商品を買い取らず、借りて販売し、売れなければ返品するというのが、業界の慣行でした。そのため、メーカーは返品のリスクを考えて、値付けを高くするうえ、無難な商品作りをしがちだったのです。それに対して当社は、メーカーから商品を現金で買い取っています。それによって価格を抑えられ、多様なバリエーションも揃えられています」(一蔵・広報 宮川有美氏)

 これは、従来はメーカーが抱えていた売れ残るリスクを、一蔵が背負うことにしたということでもある。多店舗展開をしているため1店舗当たりのリスクは下げられるとはいえ、市場が縮小している中、どのように販売をしているのだろうか。

「当社は催事での対面販売から始まったこともあり、店舗スタッフの販売力が高いのだと思います。店舗の数は多いですが、マニュアルによって接客を標準化し、スタッフを早く育成できるようにしています。また、まだ割合は少ないですがSPAにも注力していて、店舗でつかんだお客様のニーズを自社の商品作りにすぐに反映できるようにしています。これも、店舗スタッフのモチベーションアップにつながっていると思います」(宮川氏)

 もちろん、販売力強化以外にも、売上げを伸ばす施策を様々に展開している。着物には、大きく分けて一般呉服と成人式用の振り袖があり、一般呉服については、リピーターを増やすことに力を入れている。

「着物のファンを増やすため、『いち瑠』という着方教室を運営しています。着付けの仕方を学ぶだけでなく、着物を着て、食事会や歌舞伎鑑賞をしたり、ビアガーデンに行ったりといったイベントを楽しむもので、イベントは年間約800回行なっています。20代から高齢の方まで、幅広くご参加いただいています」(宮川氏)

 一方、振り袖については、成人式は一生に1度しかないため、リピーターを増やすのは難しい。そこで、新成人に選んでもらえる商品作りや認知度の向上に努めている。

「SAKURA学園という17~20歳の女性たちのコミュニティを運営して、ヘアメイクやファッションなどの情報を提供しています。直接的に販売促進をするものではなく、当社をより広く認知していただくことや、これから振り袖を買うお客様の嗜好を知ることが目的です。会員の方々と一緒にオリジナルの振り袖を作ったこともあります」(宮川氏)

 また、一蔵が展開する振り袖ブランドの1つ「オンディーヌ」では振り袖のレンタル事業も行なっている。今や振り袖のレンタルは広く行なわれているビジネスだが、一蔵が参入したのはかなり早い時期だったそうだ。

「1995年に〔株〕オンディーヌを買収して、レンタル事業に進出しました。当時、振り袖のレンタルは写真スタジオがしていたくらいで、本格的に注力している会社はなく、当社が業界の先駆けでした。今では、所有にこだわらなくなった時流にも乗って、売上げ比率は単価の高い販売のほうが大きいものの、件数としては販売を上回るまでに成長しています」(宮川氏)

 一蔵は2000年にウエディング事業にも進出している。和装事業との直接的な関係はないということだが、結婚式で和装を経験した人が着物に興味を持ったり、成人式で一蔵の振り袖を着た人が結婚式も一蔵で挙げたりすることはあるそうだ。また、ウエディングの式場を、いち瑠のイベントの会場や着物のカタログの撮影場所に利用することもあるという。ウエディングのスタッフが持つ撮影やヘアメイク、室内装飾などのスキルも、和装事業に活きているということだ。

 

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