2020年04月15日 公開
2023年02月21日 更新
今年4月1日、「同一労働同一賃金」を定める法律が施行された(中小企業については来年4月1日施行)。これに対応するため、各社の経営陣や人事担当者などが準備を進めてきたわけだが、他人事のように思っている人も多いのではないだろうか。しかし、部下を持つ現場マネージャーなら、ぜひとも知っておくべきことがある。組織・人事のコンサルタントとして150社以上を担当してきた、〔株〕リクルートマネジメントソリューションズのシニアコンサルタント・武藤(ぶとう)久美子氏に話を聞いた。
――「同一労働同一賃金」の導入は、正社員でも非正規社員でも、同じ労働をすれば同じ賃金を支払うことにして、格差をなくそう、ということが目的ですよね?
武藤 基本給だけでなく賞与や食事手当などの諸手当についても、不合理な待遇差をなくすものです。法律の施行に向けて、合理的な説明ができない待遇差を是正するための取り組みを、各社が行なってきました。
ただ、誤解されがちなのですが、合理的な説明ができない待遇差をなくそうというものであって、待遇差を一切なくそうというものではありません。法律でも、非正規社員には待遇差の説明を求める権利があり、事業主には説明をする義務がある、とされていて、待遇差をなくさなければならないとは書いてありません。
――合理的な説明ができれば、待遇差があってもいい?
武藤 そういうことです。例えば、実務に熟練した非正規社員がいる部署に、正社員の新人が配属になって、その非正規社員が新人に仕事を教えることになったとき、「どうして、教えている私よりも、教わっている新人のほうが、給料が高いの?」という不満が出ることがあるでしょう。そのとき、非正規社員には今の仕事で活躍することを期待しているのに対して、正社員には異動や昇進があり、将来、今の仕事とは別の形で活躍することも期待しているからだ、というような説明ができれば問題ありません。
――そういった説明をされて、納得できるでしょうか?
武藤 実際問題としては、必ずしも納得してくれる人ばかりではないでしょうね。そもそも「どうしてなんですか?」と声を上げる人は少数派だと思いますが、声を上げた人に対して「法律ではこうなっている」などと形式的な対応をすると、話がこじれる可能性もあります。
声を上げる人は、処遇にだけ不満を抱えているとは限りません。自分の仕事が認められていると実感できないことも不満につながります。ですから、実務的に重要なのは、現場のマネージャーが部下である非正規社員の仕事をきちんと認めて、正当に評価することです。自分の仕事が認められていると実感できれば、モヤモヤは晴れます。
そのうえで、声を上げる人がいた場合、その対象は、まずは直属のマネージャーに向けられることが多いでしょうから、待遇差の説明を合理的にできる準備もしておくべきだと思います。
更新:11月25日 00:05