2020年04月13日 公開
梅田氏が「内なる言葉」を意識する重要性に気づいたのは、コピーライターになって5年目頃だった。それからは他人の中にある「内なる言葉」にも目を向けるようになったという。
「僕がコピーを作るときは、商品やサービスに関わった人たちに話を聞き、そこに込めた思いを理解したうえで、自分の解釈を加えて言葉にしていきます。
相手の思いを理解するには、『その人が、本当は言いたいけれど、まだ口にできていないこと』を探して、引き出す必要がある。このとき、自分の『内なる言葉』を意識していると、他人の中にも自分と同じように思考の広さや深さがあるはずだと思える。つまり、他人への敬意が生まれるのです。
自分ですらこんなに複雑な内面を持つ人間なのだと気づくと、他人に変なレッテルを貼らなくなります。『あいつはバカだから』などと、ひと言で相手を決めつけることもなくなります。話を聞くときも、『この人はまだ言いたいことの2割しか言えていないんじゃないか。だったら残りの8割はなんだろう?』と興味を持って言葉を引き出せるようになります。
今は多様性の時代だと言われますが、僕は『多面性』にも注目すべきだと考えています。多様性は『色々な人がいていいよね』ということで、多面性は『一人の中に色々な自分がいていいよね』ということ。一人の人間の中にもサイコロのようにいくつもの面がある。だから、今見えているのとは別の面にも目を向けるべきではないでしょうか」
チーム運営においても、上司が部下の話を聞くことの重要性はますます高まっている。
「話を聞いてもらえることは、自分が大事にされているという実感に直結します。特に上司が、部下が『本当は何がやりたいのか』に興味を持ち、聞こうとすること。そして、本人が考えるように促すことは重要。自分の意見を尊重しようとしてくれていると感じれば、自己肯定感や会社への貢献意欲につながります。
今の時代は、社会、会社、個人がバラバラの方向を向いています。右肩下がりの社会の中で、会社は自分だけが生き残ろうと右肩上がりの成長を目指す。社会とずれた会社で働く個人は、どちらを向けばいいのか迷い、悩んでいる。だから3者のベクトルを揃える必要があるのですが、社会や会社をすぐに定めるのは難しい。定めるのが一番簡単なのは、個人です。
だから、上司が部下のやりたいことに耳を傾け、どうすればこの会社で活躍できるかを一緒に考える姿勢が重要です。すると会社と個人のベクトルが一致し、部下が力を発揮し始めます。
上司が部下に対していかに敬意を払い、『あなたを大事にしているよ』と伝えられるか。それが今の時代におけるコミュニケーションのカギを握っています」
更新:11月25日 00:05