2020年02月20日 公開
2023年01月16日 更新
とはいえ、全員がその技を習得する必要はないとも語る。
「『聞き上手』には2通りあると思います。前者は今お話ししたような本物の聞き上手。後者は、聞いているようで聞いていないタイプ。実際のところ、世の聞き上手の大半は後者でしょう。でもそれは悪いことではないと思います。極端な話、バレなければいいのでは(笑)。相手が『話しやすい』と感じるなら、十分に良い聞き手と言えます」
聞き手の姿勢によって話しやすさは大きく変わる。
「最近は話す機会が増えたので、なおさらそう感じます。ビビッドなリアクションで聞いてもらえれば言葉が滞りなく出てきます。私もそのような聞き手でありたいと思いますね」
対して、「良くない聞き手」に遭遇することもある。
「例えば、聞く姿勢を示しておきながら自分の話に持っていく我田引水タイプ。これは政治家、それも若手政治家の方に多いのですが、自分から質問を投げかけておいて、答えが返ってきたら『私もそうなんだ、実は』『それは僕が思うに』と、話を奪ってしまうのです。つまり、自分の考えを切り出すきっかけにしたかっただけ。こういう人はちょっとげんなりしますね」
もう1タイプ、「損をしている聞き手」もいるという。
「実は聞いているのに、態度に表さないタイプです。こちらは居心地の悪い思いをしながら話を終えるのですが、その後、驚くほど的確なコメントが返ってくるのです。笑顔でうなずいていた方より深く理解してくださっていることも(笑)。ただ、それでもなお、記憶の中では笑顔で聞いていた方のほうが好印象となって残るのです」
実際に聞いているか否かより、聞く姿勢が相手に伝わっているか──真のポイントは、むしろここにある。
「聞くことは受動的な行為だと思われがちですが、実は非常に能動的です。あなたの話に興味がある・理解している・賛同している、といった態度を絶えず話し手に伝え続ける。聞くこともまた、一つの自己表現なのです」
(「THE21」2019年8月号掲載インタビューより 取材・構成:林加愛 写真撮影:長谷川博一)
更新:11月24日 00:05