2020年01月07日 公開
2022年10月25日 更新
――他の事業についてはいかがでしょう?
住本 投資信託の販売も手数料の安さを活かせる事業なのですが、正直なところ、ネット証券会社に比べて商品数ではとてもかないません。しかし、「老後2,000万円問題」が騒がれたり、「人生100年時代」と言われたりして、年金だけでは豊かな老後が暮らせないという認識が広まっていますから、今後は資産形成の分野にも力を入れていきたいと考えています。
そこで考えているのが、インターネットの外のリアルな場でも、お客様との接点を増やすことです。投資信託を並べて「自由に選んでください」と言っても、どれを選べばいいのかわからないお客様は多いでしょう。ですから、リアルな場で背中を押してあげることも必要だと思います。
2017年には、東京・銀座に「CONSULTING PLAZA」という場を設けました。そこでセミナーを開催したり、個別相談に応じたりしています。
――人材育成の面では、データを利活用できる人材を育てているとか。
住本 インターネット上で、どういうお客様が、どういうニーズを持っているのかを把握し、それに応える商品をタイムリーにご提案するためには、データの利活用ができる人材が不可欠です。
例えば、ある商品に興味を持っているのはこういう属性のお客様だということがわかれば、その属性の方だけにご案内のメールを送れます。興味のない商品の案内メールが届くのは、お客様にとって迷惑でしょう。当社のウェブサイトのどのページを、どれだけ見たかのデータも取れますから、それをもとに個々人の興味を把握することもできます。
そうしたことを実現するため、ソニーグループにおけるデータサイエンスの拠点であるデータサイエンスラボ(※)と協同し、社員向けに「データサイエンスブートキャンプ」を実施しています。これは通常3週間のプログラムなのですが、当社の新卒社員用に特別に1週間のプログラムを組んでもらい、今年は2019年度の新卒社員17人全員と若手社員7人の計24人が参加しました。これは、2020年度以降も続けるつもりです。
データアナリティクス部も2017年に新設しました。そこから新たな商品やサービスを生み出していければと思っています。
(※)データサイエンスラボ(略称DSL)は、グループ内のデータ活用を推し進めるべく、〔株〕ソニーコンピュータサイエンス研究所、ソニー〔株〕、ソニーグローバルソリューションズ〔株〕が共同で設立したデータアナリティクス人材の育成機関
――デビットカードの利用状況のデータからも、顧客の興味を分析できますね。
住本 そうですね。
――ソニーから人材を受け入れることはしないのでしょうか?
住本 プロジェクトによっては手伝っていただいているものもあります。また、AIやフィンテックなどの技術を使わないかというお話を、ソニーからいただくこともあります。
――ネット銀行は多くありますが、ITの技術を持っているソニーのグループ会社だというところが、今こそ、大きな強みになりそうですね。
住本 確かに、他のネット銀行とは違う点ではありますね。その成果を発表できるときを楽しみにしています。
――既にいくつかお聞きしましたが、これからの展開で他に考えていることはありますか?
住本 インターネットの外のリアルな場を増やしていく方法の一つとして、ソニー生命のような代理店を増やしていきたいと考えています。
既に始めているところでは、2019年10月から、〔株〕ゆうちょ銀行に当社の住宅ローンの代理店になっていただいています。
また、全日本空輸〔株〕(ANA)と提携して、そのグループ会社のANA X〔株〕に外貨預金の代理店になっていただき、2019年11月から、ANAマイレージクラブの会員向けに「ANAマイル付き外貨定期預金」を取り扱っていただいています。これは、外貨預金の利息に加えてANAマイルがつく商品です。マイルを貯めたいお客様には大変優れたものとなっています。
今後、さらに多くの企業と提携し、また扱っていただく商品の種類も増やしていきたいと考えています。
――最後に、住本社長はソニー生命でのキャリアが長いですが、ソニー銀行に移って感じられたことを教えてください。
住本 ソニー生命はライフプランナーを介してお客様と接する業態ですが、先ほども申し上げたように、ソニー銀行はインターネットを通じてお客様と直接接する業態です。だから、お客様の情報をよりよく知ることができます。その情報を活かして、様々な商品やサービスをご提案できることに、面白みを感じています。
《写真撮影:まるやゆういち》
更新:11月25日 00:05