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電気自動車「リーフ」は、ゴーン氏最大の失敗だった?

2019年10月21日 公開
2020年12月14日 更新

法木秀雄(早稲田大学ビジネススクール元教授)

ノーベル賞でも話題になった「リチウムイオン電池」。その難しさ

EV開発において最も大きなウェイトを占めるのが、リチウムイオン電池である。ガソリン自動車におけるエンジンにあたるこのリチウムイオン電池だが、当時はまだまだ開発途上であった。短時間での充電をどのように実現するのか、そもそも発火性のある不安定な物質であるリチウムの安全性をどう確保するのかなど、さまざまな課題が横たわっていた。

中でも特にネックとなっていたのが、容量の問題であった。十分な航続距離を確保しようとすれば、電池の容量を大きくしなければならない。だが、車体の大きさや価格などにより、当然、制約がかかる。しかも当時、充電スポットは数えるほどしかなかった。

 

都内から山中湖にすらたどり着けない?

その結果、2010年に発売された初代リーフは、100%充電で200キロ前後の走行距離ということになった。一見、十分な走行距離に見えるが、これはあくまで冷暖房をまったく使用せず、完全にフラットな道路を一定の速度で走行するという、現実にはあり得ない走行条件での距離だったのだ。

おそらく、真冬や真夏の環境下で、家族3人でちょっと荷物を積んだら、日本橋から130キロ先の山中湖にすらたどり着けなかったことだろう。談合坂サービスエリアにすらたどり着けたか怪しい。

このような車のニーズは極めて限定される。結果的に、日本でも米国でも目標台数の半分も売れず、電池工場も車両工場も、稼働率は半分にも達しなかった。

一方、まったく新しいモデルであるだけに、認知度を上げるために膨大な広告宣伝が行われた。ただ、長時間の走行に耐え切れず、充電スポットも不足する中、いくら広告宣伝に力を入れたところで、日米ともに売れるはずがなかった。

ゴーン氏はこのあたりの情報をまったく開示していないが、おそらくかなりの損失が発生したはずだ。私の推測では、実際の販売数は生産計画の5分の1〜3分の1と大きく下回り、最初の5年間で1000億円を超える規模の損失が発生したと考えられる。

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