30~40代で転職して、入社後にうまくいく人といかない人の差は、当然のことながら、新しい職場に入っていく“新参者”である転職者自身の立ち回り方にあります。
幹部クラスとして入社される方も多いこの世代には、新たな部下たち、若手たちの前に、ドンと座りたい気持ちがあるかもしれません。しかし、自ら率先して主要な社員と関係構築ができるか否かが、その会社でリーダーとして活躍していけるか否かを左右します。
会社側や職場の上司、同僚の方々が受け入れに気を使ってくれるケースも少なくありませんが、待ち受けるのではなく、転職者のほうから積極的に、「ぜひ一度、担当されている業務についてお聞かせください」「部門のことについて教えてください」「食事をしながら色々とお話ししましょう」と、上司部下を問わず、また部署を越えて、キーパーソンと思われる人たちに働きかけましょう。入社後すぐにこのような行動を起こしておくと、その後、巡航モードに入ってから、とても楽になるものです。
また、特に部署内の人たちや直接に業務で関係している人たちに対して、サポーティブにどんどん動けるか否かも、その後に大きく影響します。入社後一定期間は、意識的に、あえてフォローする側に徹するのが得策でしょう。「返報性の原理」と言いますが、色々と手伝ってくれる人、助けてくれる人だという認知を得れば、「そんな相手にお返しをしなければ」と潜在的に思ってくれる味方ができます。これが、転職先の会社での仕事のやりやすさへとつながるのです。
転職先でうまくいかない人は、この逆で、「受け身」「協業する姿勢がない」ということで孤立してしまい、社内で浮いた存在となってしまうパターンです。
ただ、積極的な姿勢を取る際に気をつけていただきたいことが1点あります。それは、「前職前例主義」です。特に大手企業から中堅中小企業やベンチャー企業に転職した場合、「前の会社ではこうやっていた」を権威のように振りかざす人が、嫌われ者のパターンのNo.1です。「前の会社がやっていたから」ではなく、「このようにしたほうが、さらによくなりそうですよね」というような提案型スタイルでいくよう気をつけましょう。
30~40代で転職してうまくいくかどうかは、突き詰めれば、「この人は何をする人なのか」を、周囲に広く、早期に認識させられるか否かにかかっています。「あの人、なんの人?」「どこから来たんだろうね?」「どれくらいのレベルの人なの?」。どの会社においても、新たに転職してきた人には、悪気なく、社員たちはそのようなことを思い、“お手並み拝見”しているものです。変に気負いすぎるのは逆によくありませんが、何事も最初が肝心。転職においては「最初の90日が、その後のすべてを決める」と言われます。しっかりスタートダッシュをかけましょう。
また、新会社に着任して、入社後の忙しさが少し落ち着いたタイミングで、ぜひお勧めしたいのが、「そもそも今回、なぜ転職したのか」について改めて思い返してみることです。
入社後の手続きや受け入れ研修、新部署の業務や同僚たちとのコミュニケーションに追われて、スタート当初はかなり忙殺されたり、気を張って精神的にも疲れたりする時期があるはずです。そのために、ともすると、転職の大きな目的を忘れたまま、新しい日常に入ってしまうということがよくあります。スタートの時期にこそ、改めて、転職してどのような仕事をし、どのようなキャリアを目指そうと志したのか、しっかり認識し直しましょう。その会社を選択した最終意思決定ポイントとのズレは起きていないでしょうか?
転職によるキャリア形成には、自らが望む、自分にとって望ましい職務へと、積極的に舵取りの主導権を執るという良い面があります。だからこそ、年齢が上がれば上がるほど、転職後の成功と失敗がもたらす、その後のキャリアへのインパクトは、乗数的に大きくなります。ですから、最も大事なことは、実は、転職後よりも、転職活動時に、選択ミスを絶対にしないことです。30~40代の転職こそ、「転職は慎重に」なのです。
更新:11月22日 00:05