2018年11月08日 公開
2018年11月08日 更新
――ご著書『お店を始める前にするべき5つのこと』には、開業支援は「恩返し」だとも書かれています。
田村 当社の音楽配信は、街なかの商店街や駅前の繁華街からスタートしました。そこに軒を連ねる個人商店や小さなお店、そうした方々がいたからこそ、USENはここまで成長し続けてこられました。ところが、今、地方都市に行くと、商店街や駅前でも人通りが少なくなっています。
シャッター通りになってしまった街の活性化を、我々が1社でできるかといえば、それは難しいと思います。けれども、地方から東京へ来て、飲食店や理美容室などで経験を積み、資金も貯めて、地元に帰ってお店を開きたいという方は大勢います。その方たちを支援することで、全国の街にお店が増えて、活気が生まれればいいな、と思っています。それが、「恩返し」の意味です。
例えば、島根県の出雲市は、人口減少に歯止めをかけるためには活気ある街を作らなければならないと考え、盛んに商工振興策を打ち出されています。そこで当社は、出雲市と提携して、同市で開業支援セミナーやビジネスプランコンテストを行なったりもしています。
――提携先として出雲市を選んだ理由は?
田村 自宅で新聞を読んでいると、たまたま出雲市の記事が目に入ったんです。出雲市の商店街を『人生ゲーム』になぞらえて、お店をめぐるという、出雲市と〔株〕タカラトミーとがタイアップしたイベントの記事でした。「これは面白い」と思って、秘書に出雲市に電話をしてもらったのがきっかけです。
出雲市に限らず、またUSEN本社に限らず、全国にある拠点とそれぞれの地元との連携が進めばいいな、と思っています。
2018年10月下旬、REACH STOCKのメンバーがシェフ3名を連れて出雲市の生産地8カ所をまわり、夜は市役所職員も交えて意見交換会を兼ねた交流会を開催した
――地方で開業して成功するためには、何かポイントがあるのでしょうか?
田村 地方でも、東京でも、まずは物件ですね。家賃の高い一等地は避けて、「固定費を下げるべき」とセミナーではお伝えしています。
昔は、食事をするときには、街なかを歩いていて目に入ったお店に入るということが多かったと思いますが、今はスマホで調べて、お店を決めてから食べに行くことがほとんどです。ですから、立地よりも、プロモーションのほうが大事だと考えています。
――最後に、今後の御社の事業計画について教えてください。
田村 今期(2019年8月期)から3カ年の中期計画を作っていて、売上げのポートフォリオで言うと、最も大きな伸びを計画しているのは電力・ガスのエネルギー事業です。前期は160億円でしたが、今期は315億円、21年8月期までには1,000億円を目指しています。
――ガスは、現状では1都6県が対象ということでしたが、エリアを拡大しての数字ですか?
田村 調達の問題があるので、現状では1都6県だけでの展開を考えています。
――レジなどのIoT事業も、前期が22億円で21年8月期が80~90億円と、大きく伸びる計画ですね。音楽配信事業についても、前期の400億円から21年8月期の410~420億円へと、伸び率は小さいですが、成長一途の計画になっています。
田村 音楽配信は高収益のビジネスであり、未来に向けた投資の源泉でもありますので、しっかり維持したいと考えています。
――この3カ年計画の達成に向けて、動き出しているところですね。
田村 中期目標の一つ目は、Uレジだけでなく、提携先の〔株〕リクルートライフスタイルの『Airレジ』や、その他のレジも含めて、月に2,000台のPOSレジを販売する体制を確立させること。そうなれば、「USEN=POSレジ」という認知が一定程度広がるものと考えています。
二つ目は、先ほどもお話したように、エネルギー事業を1,000億円にすること。今はまだ投資フェーズと言えますが、1,000億円に達すれば、安定的に利益が出るようになります。
三つ目が、IoT Platformの構築です。これは、レジを起点にして、ハード、ソフト、アプリのすべてをUSENがパッケージとして提供すること。お客様にとっては、すべてUSENの担当者に任せられるという状態にすることです。
「お店の未来を創造する」という理念を掲げて、それを実現するために活動を進めていきます。
更新:11月22日 00:05