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「アスペルガー社長」はなぜ末期がんを乗り越え、上場を果たせたのか?

2018年10月22日 公開
2020年04月26日 更新

谷口浩(South Pacific Free Bird社長)

あまりに親切なフィジー人に魅せられる

学校を卒業後、親の会社で働いたり、仲間と起業してビジネスを始めたりした谷口氏だったが、仕事は楽しいものではなかったという。そんな中、フィジーと出合ったきっかけは、「運転免許証を取るため」という意外なものだった。

「当時、フィジーなら旅行者でも運転免許証を取れると知り、そのために渡航したのですが、フィジーの運転免許センターで申請を待っていると、そこで出会った親切なおじさんから『暇なら家に遊びに来ないか?』と誘われました。そうしておじさんの家で夕食をご馳走になっていると、今度はその家に来ていたおばさんから誘われ、翌日はそのおばさんの家で昼食をご馳走になることに。

そんなことが繰り返され、ほぼ1週間、ほとんどお金を使うことなく過ごすことになったのです。しかもその間、ずっと笑って過ごしていました」

当時、日本での仕事に疲れてしまっていた谷口氏は、すっかりフィジーに魅せられた。そこで、なんとかフィジーでビジネスができないか、模索を始めた。

「いろいろ調べているうちに、ある問題が見えてきました。フィジーは少子化が進んでおり、学校の校舎の半分が使われなくなっていたのです。さらに、子供の数が少ないため、大学を卒業して教員の免許を取っても働き口がない人が大勢いるという問題もありました。

一方、フィジーの公用語は英語。しかも先ほどご紹介したとおり、非常にフレンドリーな人ばかりです。余っている校舎や働き口のない人々を活用することで語学学校ができるのではないか。そう考えたのです」

そこで谷口氏はフィジー政府と交渉し、使われなくなっている教室を安く借り上げることに成功。2004年、仕事のない先生たちを雇用し、日本人の学生を中心に非英語圏の留学生たちに英語を教える語学学校をスタートした。

「スタート直後から人気で、2年後には2校目を開設。気が付けば世界で2番目に大きな語学学校になっていました。格安の授業料が支持されたことはもちろんですが、フィジー人たちの温かいホスピタリティーのおかげで、学生たちの英語力が予想以上に伸びたことが評価されたのだと思います」

 

人員整理の危機を乗り越えた「裏ワザ」


授業風景。英語を公用語とし、かつフレンドリーなフィジー人の授業に対する評価は高い。

2007年、日本で開催されたベンチャービジネスの大会でプレゼンを行なうと、投資家から増資の話が殺到。上場も視野に入り、ビジネスは順風満帆に進むかに見えた。だが、そこでリーマンショックに直面。学生数は急激に落ち込み、社員の人員整理の話も出た。

「それでも、僕は『諦める』ことができません。どうしても社員の首を切りたくなかった。そこでいろいろ考えた結果、『社員に無料でフィジー留学してもらうことで、景気が回復するまで待機してもらう』という方法を思いついたのです。これなら社員を首にせずに済み、かつ、無為に過ごしてもらうこともなくなります。

すると、その話をどこかで耳にした某大手商社の人事部から問い合わせが入ったのです。その会社では景気の悪化で50名ほどの大学生が内定切りを迫られていたのですが、それはさすがに忍びない。そこで同様に、フィジーで1年間ほど英語を勉強させながら、待機させておきたいという話でした。

この商談がきっかけで流れは一変。こうして、一度は身売りさえ考えた会社はV字回復を果たしたのです」

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末期がんが発覚!それでも「諦めない」 >

著者紹介

谷口浩(たにぐち・ひろし)

South Pacific Free Bird(株)代表取締役社長 / Free Bird Inst

1972年福井県生まれ。高校卒業後、中国政府のスカラシップを活用し、上海の同済大学に入学。4年の時に中退。その後香港の不動産会社、タイの建築会社に勤務。1997年、アジア経済危機の影響で帰国。父が経営する建設会社に入社するも1年半で辞職。その後石川県金沢市にて、外国人研修生向けに日本語教育などを手掛け、国内企業への人材提供を主な事業とする協同組合を設立。4年間で売上高3億8000万円の規模まで成長させたのち退任。2004年、フィジーでの語学学校の運営を柱としたSouth Pacific Free Bird株式会社を設立。2010年にはフィジー政府から依頼され、底辺高校の再建に着手。日本人生徒の受け入れも始める。
これまでに受け入れた留学生はのべ2万2500人以上。2016年にはステージ4の末期がんを宣告されるが、その後もフィジーで学生のために尽力する日々を送っている。2017年2月2日、南太平洋証券取引所に上場。

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