2018年09月28日 公開
2023年03月14日 更新
〔株〕アプライドサイエンス社長の鵜澤正和氏(左)とクンプラン・パワーネット社社長のリャン・テックメン氏
スマートフォンや電気自動車(EV)などに広く使われ、私たちの生活には欠かせない存在になっているリチウムイオン電池。しかし、充電に時間がかかることに不便を感じている人は多いだろう。〔株〕アプライドサイエンスは、その不満を解消する新しいリチウムイオン電池を開発。業務提携先であるマレーシアのクンプラン・パワーネット社が、まずはモバイルバッテリーとして量産する計画を発表した。
9月28日(金)に外国人特派員記者クラブ(東京都千代田区)で行なわれた記者会見には、アプライドサイエンス社長の鵜澤正和氏とクンプラン・パワーネット社社長のリャン・テックメン氏が登壇。実際にモバイルバッテリーに3分間でフル充電するデモンストレーションを行なった。
アプライドサイエンスが開発したリチウムイオン電池は、従来のものと材料はまったく同じ。違うのは、製造の過程で活物質を混錬する「水」だ。活物質の量によって、電池の容量が決まる。
活物質は微細な粉体で、水と練り合わせて電極に塗る。通常のリチウムイオン電池では、活物質を電極の表面に滑らかに塗ることができず、ダマになっていた。そのため、電池内部の電気抵抗が高くなり、充電に時間がかかるうえ、充電の際の発熱量が大きかったのだ。アプライドサイエンスは、水の「クラスター」を微細化することで、この問題を解決した。
水はH2O分子だが、自然界では一つずつの分子がバラバラに存在しているわけではなく、15~20個の分子が集まり、ブドウの房のようなクラスターになって存在している。この状態の水で活物質を混錬しても、滑らかに混ざり合わない。
水に関する研究開発に30年間従事してきた鵜澤氏は、クラスターを分子4個程度の大きさに微細化し、その状態を維持することに成功。その水を使って活物質を混錬し、電極に塗ることで、超高速充電ができ、しかも充電時の発熱量が少ない電池を実現させたのだ。充電できる回数も、約1,500回と、一般的なリチウムイオン電池(約500回)よりも多い。
リャン氏は、モバイルバッテリーの量産化は第一歩に過ぎないと話した。見据えているのは、急速な市場拡大が予測されているEVへの搭載だ。
世界を変える大発明となるか。今後が注目される。
更新:11月22日 00:05