THE21 » キャリア » なぜ、エリートは涼しい顔で結果を出せるのか?

なぜ、エリートは涼しい顔で結果を出せるのか?

2018年01月29日 公開
2023年01月23日 更新

裴英洙(医師/ハイズ代表取締役社長)

「全体最適のリズム」を作れる人になろう

以上の「休息術のスキルアップ」は、あなたがより高いパフォーマンスを発揮し、魅力的な人間性を備えるのに一役買います。その結果として役職やポジションが上がれば、より多くの自由が手に入り、さらに自分の裁量に合わせた休息が取れるという好循環が生まれます。仕事に飲まれいつも時間に追われている人には、これと逆のことが起きているわけです。

戦略的な休息を取れるようになった先には「指揮者」としてチーム全体のリズムを自ら作り出す世界があるわけですが、そこでもう一つ、一流になれるかどうかの分かれめがあります。チームの指揮者となったとき、「自分だけが心地良い音楽」を一方的に流すのは二流。自分と部下全員が快適でいられるリズムを組めるのが一流です。

円滑な組織運営がリーダーの仕事。部下の心身の健康まで考えることは不可欠です。皆が居心地のいいリズムを作るには、会社の理念や、あなた自身の「こうありたい」「こんな人生を送りたい」という思想や人間性も、深くかかわってきます。

今は「指揮者」ではない人も、この視点は今のうちから持っておきましょう。あなたの休息の時間を、自分と周囲のこれからに、どう生かすか。その思いの積み重ねが、あなた自身の人生に厚みを加えていくのです。

 

手帳で自分の睡眠時間を管理
一流の人が常にエネルギッシュなのは、仕事の効率を高めて上手に休息を取っているから。さらに彼らは「疲れたら休む」のではなく「疲れる前に休む」。一度疲れ切ると、本来は楽しめる趣味すらも負担になってしまうからだ。そのような事態を防ぐためには、睡眠が不可欠。ただ、何時間眠るべきかには個人差がある。そこで、何時間寝たら翌日どんな調子だったか、簡単に手帳にメモする習慣をつけ、自分のベストな睡眠時間を知ろう。
「自分と趣味の違う人」と関わる
休息法を選ぶときは、流行に乗るだけの「見栄え第一主義」に陥らず、本当に自分がやりたいことをやろう。しっかりリラックスするためには、世の中の評価より自分の五感を軸に考えるのが正解だ。ただ、自分の好みばかりに傾くと「発見」のチャンスが減る。そこで、10回に1回は、自分が未経験の趣味を持つ友人を頼り「今度、僕も登山に連れて行って」などと頼んでみよう。一流が好奇心旺盛なのは、未知の世界の面白さを知っているからなのだ。
「仕事の外」に出る時間を作る
休息は、日常から離れ「思考する」時間でもある。そこで、時にはあえて仕事と別次元の体験を。「ビジネス書は読まないが小説は読む」というエリートが多いのは、小説、映画、旅行などが仕事とかけ離れていて、かつ「人としての在り方」を考えさせる作用があるからだ。とくに有益なのは古今東西の名作小説。裴氏の愛読書は三島由紀夫の『金閣寺』だというが、不道徳や逸脱を描いた作品でも、そこから道徳や倫理の何たるかを考えることで、今後の行動に変化が起きるという。
「形容詞」で考えてみる
自分の仕事と休息のリズムが、ともに働く人全員のリズムと調和するよう図るのが一流の働き方。極めて高いスキルが必要だが、最大の秘訣は、「動詞」ではなく「形容詞」で仕事を捉えること――。つまり、こう「する」ではなく、こう「ある」よう意識することだ。「売上げ1億を達成する」「利益率を〇%にする」など、業務上の目的の多くは動詞型だが、それとは別に、「皆が笑顔でいる」といった「状態」に落とし込むと、きちんと休息の取れるリズムを構成しやすくなる。

 

《『THE21』2017年12月号より》

 

著者紹介

裴 英洙(はい・えいしゅ)

ハイズ〔株〕代表取締役社長/医師/医学博士/MBA

1972年、奈良県生まれ。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科に勤務。医師として働きながら、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)を首席修了。ビジネス・スクール在学中に、医療機関再生コンサルティング会社を設立。現在も医師として臨床業務をしつつ、医療機関経営に関するアドバイスを行なう。著書に、『一流の睡眠「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略』(ダイヤモンド社)など。

THE21 購入

2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円