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社会人なら知らないと損する「お金の常識」とは?【後編】

2017年10月04日 公開
2023年03月23日 更新

大江英樹(経済コラムニスト/オフィス・リベルタス代表)

入るを計りて出ずるを制す

 では彼らは一体どうやってお金を貯めることができたのでしょうか。昔からお金を貯める根本は「入るを計りて出ずるを制す」ことだと言われます。できるだけ多くの収入が入るようにし、支出はなるべく抑える。もっと簡単に言えば、収入の範囲内でしかお金を使ってはいけない、ということです。これはごく当然のことなのですが、実際には多くの人が実行できていません。その最大の理由は収入にばかり気を取られて、支出の管理がおろそかになっているからです。

 世の中には年収が1000万円以上であるにもかかわらず、いつもローンで苦しんでいる人がいる一方、年収が300万円でも結構な貯金額を持っている人もいます。大切なことは収入ではなく、収支なのです。支出をコントロールするための方法は、実にさまざまです。それだけで本が一冊書けてしまうぐらいたくさんありますが、大切なことに絞ると次の3つだけだと思います。

①まずは数字を把握する

②過度に節約をしない

③お金を目に見えるところに置いておかない

③については前編でもお話ししたことですが、お金を貯める方法は給与天引き以外にないということです。と同時に給与天引きというのは支出をコントロールするためにも一番よい手段なのです。最初から一定金額を天引きしてしまえば、残ったお金で生活するしかありません。結果として不要な支出は削られることになるでしょうし、一方で天引きされた分は確実に貯まっていくからです。

 今から20年ほど前に出版された『となりの億万長者』(原題:The Millionaire Next Door)という名著があります。この本はよくありがちなお金持ちになるためのノウハウ本ではありません。アメリカにおいて実際に純資産100万ドル以上を持つ人たちにアンケートやインタビューを行い、彼らの行動や思考が本当のところはどのようなものであり、何が彼らを億万長者にしたのか、ということを丹念に調査してまとめたものです。

 それによれば、お金持ちというのは、別によい車に乗っているわけでも、毎日豪華な料理を食べているわけでもなく、ごくごく質素に暮らしているという人たちなのだそうです。決して派手なことはせず、地味に生きているけど資産をたくさん持っている。なぜそうなったのかという理由はいろいろありますが、決定的なことは「収入以上にお金を使わなかった」というたったそれだけのことです。

「収入を増やそう」、「お金を儲けよう」と必要以上にリスクを取ってリターンを狙っていくよりもまじめに働いてスキルアップし、昇給や昇格を求めたほうがはるかに効率はよいということでしょう。それにくわえて、支出管理ができる仕組み作りを考えること、要は「収入よりも収支」だとしっかりと認識しておくことが何よりも大切なことです。

 以上の基本原則を日頃から実行することこそ、お金を自分で考えられるようになる一番の近道なのです。

 

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著者紹介

大江英樹(おおえ・ひでき)

経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。大手証券会社で個人資産運用業務、企業年金制度のコンサルティングに従事。定年後の2012年にオフィス・リベルタス設立。現在、年間140を超える講演、月12本の連載を抱え、多忙な日々を過ごす。著書に『定年男子 定年女子』(日経BP社・共著)など多数。

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