2017年08月11日 公開
2023年02月08日 更新
今まさに開幕中の夏の高校野球。
そういえば、10年ほど前までは「北国は不利」などと言われていて、優勝旗が白河の関を越えるかどうかが大きな関心事の一つだったものです。
ただ、それも今や昔。
仙台育英や青森山田などは毎年「優勝候補」と言われるほどの強豪となり、今年の大会でも東北、北陸含め多くの学校が勝ち残っています。そもそも最近は「北国だから」と言われることもなくなってきていると思います。
この大きな意識変革が起きたのは、なんといっても2004年、2005年の北海道代表・駒大苫小牧の甲子園連覇でしょう。
そして、2006年の「早稲田実業対駒大苫小牧」の伝説の一戦。
この年は準優勝に終わったものの、「マー君対ハンカチ王子」の物語により、多くの人に強豪校・駒大苫小牧の印象を植え付けたことと思います。
その「黄金期」の駒大苫小牧を率いたのが、本書の主人公である香田誉士史監督。
まず驚かされるのが、彼が当時まだ30代前半だったという若さと、その本能むき出しの指導方法。
彼の生い立ちから駒大苫小牧の躍進、そして学校を追われるまでを、本人だけでなく多くの周辺の人へのインタビューをもとに構成したのが本書。
高校野球の本ではあるのですが、指導者のあるべき姿、そしてその難しさを考えさせる、マネージャー必読の書だと思います。
香田監督はまさに「こんな人がいたら大変だろうなぁ」という人物。
発言はつねにブレがあり、気分屋で、しかも喧嘩っ早い。
でも、勝ちたい、強くなりたい、という思いだけは人一倍強い。だから、その思いと生徒たちの思いが一致したときは奇跡的な力を発揮する。
それが2004年、05年の連覇、06年の準優勝につながった。
一方、そこにずれが生じると、組織は一気に崩壊してしまう。
事実、06年以降の崩壊はあっという間の出来事であり、彼は学校を追われることになる。
確かに香田氏は大変な人物だ。ただ、普通の会社のマネージャーだって、気分によって発言が変わったり、言っていることが矛盾したりすることはしょっちゅうあるはず。
むしろ、真剣に物事を考えるからこそ、朝令暮改的なことだって起こり得る。
言っていることが理路整然としている人、気分にムラがない人は、もちろん人格者だからこそかもしれないが、一面、勝負に本気でないからかもしれない……そんなことを考えさせられる一冊でした。
執筆:Y村
更新:11月22日 00:05