2017年03月08日 公開
2023年04月06日 更新
昨今では中国や新興国の経済の発展から、英語以外の言語も学ぶべき、などと言われる。しかし、英語だけでも苦手意識がある中で、どうしたら複数の言語に手がつけられるだろうか? 海外進出を目指す経営者向けのコンサルティングを行ない、ビジネスマン向けの語学サロンを主催する新条正恵氏は、外資系企業勤務経験の中で、なんと8カ国語を話せるようになったという。その「マルチリンガルメソッド」についてうかがった。《取材・構成=前田はるみ》
私がこの2年間で約700人の生徒さんを教えてきてわかったことは、「日本人の潜在的な英語力はすでに高い」ということです。
なぜそう言えるかというと、文部科学省が目標とする高校卒業時の英単語習得数は、3,000語です。3,000語を習得できれば、日常会話なら80%、テレビやニュースなら60%程度は理解できるレベルです。つまり、日常生活で困らない程度の英語力を私たちはすでに持っているのです。
それでも多くの人は、「せっかく覚えた単語もすっかり忘れてしまったから、自分は英語を話せない」と思っています。しかし、英語に触れる時間が増すにつれ、次第に思い出してくるものです。これは文法に関しても同じです。学生時代に学んだ英語は完全に忘れ去られたのではなく、記憶のどこかに残っているのだと考えられます。
そうであれば、英語を学び直すにあたって、単語や文法を改めて覚える必要はありません。もともと知っている英語を思い出すだけでいいのです。そう考えれば、英語学習へのハードルはかなり下がりそうです。
日本人の英語への苦手意識を助長しているのが、いきなり難しいことを話そうとする傾向があることです。
たとえば、不動産会社で働く人が自己紹介するとき、「不動産会社の物件管理部門で管理職をしています」と、日本語で聞いても理解しにくい専門用語を、そのまま英語で言おうとしてしまうのです。「不動産」は英語ではreal estateですが、その単語が出てこないので、「えーと……」と詰まってしまうのです。
難しい単語を使わなくても、同じ内容を表現することは可能です。たとえばI am a manager of an apartment management company.と言うこともできます。先ほど、日常会話に必要な単語数は3000語と言いましたが、英会話で最も頻繁に使われる単語に限れば600語程度です。
私が独学で8つの言語を習得する過程で編み出したマルチリンガルメソッドは、この「はじめの600語」を100%使いこなして、「いつでも、どこでも、誰とでも、3つの話題なら15分話せる」ことを目標にしています。
もちろん「どんな話も何時間でも話せる」のが理想ですが、そのレベルに到達するには1年以上かかります。「3つの話題なら15分」であれば30日で到達できますし、海外旅行で最低限の会話をしたい、知らない人に自己紹介をしたい、10分程度のスピーチをしたいのであれば、このレベルで問題ありません。
これができた後で、話す時間を増やし、話題を増やし、それに伴い使いこなせる単語を増やしていきます。まずは達成可能な身近な目標を設定し、成功体験を積みながら段階的にレベルアップを図るのが、マルチリンガルメソッドの重要な考え方です。
更新:11月26日 00:05