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「真田丸」に学ぶ企業生き残りの戦略とは?

2016年05月15日 公開
2023年05月16日 更新

陰山孔貴(経営学博士(MBA・工学修士))

なぜ、組織は「永続」しなくてはならないのか

生き残りをかけた戦いを繰り広げているのは、現代の企業も同じです。

我々が暮らす現代には、2通りの企業があります。
1つが「生き残ることができる企業」。
そして、もう1つが、「生き残ることができない企業」です。

ビジネスの世界において、望まれるのは、前者であることは言うまでもありません。なぜなら、企業には「永続性」が求められているからです。

たとえば、会社が急になくなることになったら、そこで働く社員は困ってしまいますよね。また、その会社から生み出される製品やサービスをうけられなくなって困る人もでてきてしまいます。そのため、企業には「永続性」が求められているのです。

 

弱者には「強者を手玉に取る力」が必要

では、「生き残ることができる企業」になるか、「生き残ることができない企業」になるかの差はどこから生まれてくるのでしょうか。
この理由には多くのものがあると思いますが、「真田丸」を見ていると、真田家のような弱者が生き残るために重要な要素が1つあることに気づきます。

それは「強者の力をうまく活用すること」です。

信繁の父であり、この時代の真田家の当主である真田昌幸は、かなりの知力の持ち主です。実際、昌幸は、武田家滅亡後、織田信長、北条氏直、徳川家康、上杉景勝、豊臣秀吉といった錚々たる武将たちと同盟や離反を繰り返し、その窮地を何度もその知力で乗り切っています。

その中でも秀逸なのが、昌幸が家康と組んでいた際のエピソードです。上杉氏への備えが必要だという理由で、その後の真田家の居城となる上田城を、徳川家の資金で作らせているのです。
しかし、昌幸は、徳川家に城まで作らせておきながら、その後、徳川家を裏切ります。そして、なんと! ライバルの上杉景勝に従うのです。これには、さすがの家康も激怒したと言われています。

当然、徳川軍は真田の上田城を攻めてきます。その数は7000人。対する、真田軍は2000人。3倍以上の数で徳川軍は真田の上田城を攻めてきたのです。
しかし、この徳川の大軍を真田軍は上田城で撃退してしまいます。

つまり、昌幸は、徳川の資金で自身の新たな居城を得ることにより、以前よりも強固な軍団に真田家を変化させていたのです。これは小国の真田家が生き残るために、徳川家という強者の力をうまく活用した例と言えますよね。
このように昌幸と真田家は、その後も強者の力をうまく活用することにより、なんとか生き残っていくのです。

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著者紹介

陰山孔貴(かげやま・よしき)

経営学者(経営学博士・MBA・工学修士)

1977年大阪府豊中市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科で電子・光子材料の研究を行った後、シャープ株式会社入社。急拡大する液晶パネル事業の経営管理、ヒット商品となった「ヘルシオ」の企画開発などに携わり3度の社内表彰を受ける。ヘルシオの企画開発期には並行して、神戸大学大学院経営学研究科にて学ぶ(博士課程を修了)。その後、シャープが経営危機に陥るなか、経営企画室で企業再建業務に従事。その過程で「モノ」よりも「ヒト」を育てる仕事をしたいという思いが芽生え、2013年から大学教員へ転身。現在、獨協大学経営学科にて「経営戦略論」の講義を担当する。「実務」と「理論」の両面に携わった経験を活かし、経営学を身近な視点で学べるだけでなく「魅力ある大人」と出会えるゼミは定員20名に対し多くの学生が殺到する人気ゼミとなっている。獨協大学 経営学科 専任講師。

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