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働けども働けどもGDPハアガラズ……(ウズベキスタン)

2016年03月14日 公開
2017年10月03日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(7)石澤義裕(デザイナー)

「10秒の仕事を3人で15分」究極の分業システム


中央アジアで人気の串焼き「シャシリク」。

ウズベキスタンは天然資源に恵まれ、ウランの生産量は世界第7位。金は8位。天然ガスの埋蔵量15位。石炭19位。綿花の輸出は自然破壊級の強制労働で、第5位。
中央アジアの人口の半分を牛耳り、中央アジア一の働き者とおだてられています。

しかしながら一人あたりのGDPは、トルクメニスタンの4分の1。カザフスタンの6分の1。世界平均の20%の稼ぎしかありません。

働けども働けども、リソースに反比例する生産性の悪さ……。
その秘密を国境事務所で目撃します。

多くのスタッフが「さも」忙しそうに右往左往していますが、反面、電池が切れたように呆けているスタッフも少なくありません。

仕事をタスク数で分けず、職員数で割っていると見ました。仕事をケーキでも切るように平等に分けあい、誰ひとり失業しないシステムです。

このウズベク流分業制は、細分化したぶんだけ混乱しているように見えますが、書類が行方不明になっても、あるいは迷宮入りしても、誰の仕業だかわからないという長所があります。

お陰さまで、旅行者の倍以上もスタッフがいるのに、事務手続きはコマ送り級のスローペース。しょっちゅう巻き戻っています。

国境ゲートでは、アサルトライフルを下げた迷彩服の兵士が車両を撮影し、別の職員がコンピュータでナンバープレートを自動テキスト化。三人目が、そのナンバーを車両書類に印刷します。

しかしなぜか何回撮影し直しても、ナンバーを読み取れません。

手で書けば10秒とかからない作業に、3人もの人員が割かれて15分。効率よりも「連帯」を大切にするのが、元ソ連組みの矜持です。

車の荷物検査に立ち会った職員は、5人。
一人が荷物をまさぐったり揉んだり透視している間、残りの4人はお喋りか、携帯電話か、煙草か、欠伸をして待機。

半分も検査しないうちに、任務は遂行したという様式美を残して、つまりは最後の30秒だけはテキパキと立ち振る舞い、挨拶もなく自由解散。

たかが軽自動車だし、まったくもってひとりで十分です。

 

営業マンは偉い人!?

  
ウズベキスタンでは、闇両替えを利用します。
20米ドルを両替えすると、200枚のお札になり、これを夜道で数える恐怖。

唯一英語の話せる職員が、保険の手続きをしなさいと電話番号をくれました。

「この番号に電話して、英語が通じるの?」

「No!」

彼の役目は電話番号の連絡だけ。
心の通わぬ分業制ですから、川下に関心はありません。

宿に到着後、スタッフが友達の勤める保険会社を紹介してくれました。

1時間も遅刻してきた営業マンは、詫びることなく愛想もない鉄仮面氏。
10カ所くらいしか記入欄のない書類に、たっぷりと1時間もかける慇懃無礼な仕事ぶりです。

保険代を支払うと、宿のスタッフが、

「200円ほどタクシー代を払ってやってください。わざわざ来てくれたのですから」

営業マンにタクシー代っ?

460円の契約に200円っ!

その泥棒に追い銭的優しさは、ウズベク流ですか?

会社勤めをしたことのない一般的なウズベク人は、営業マンなる人と商談をすることがありません。意味もなく彼らを崇めたてまつり、チップをはずみたくなるようです。人のお金で。

後日、1行書くのに5分くらいかけた保険証書ですが、日付が間違っていてエラい目に遭いました。
拷問も辞さないウズベキスタンの国境で、不法滞在の嫌疑です。


シルクロードの古都「ヒヴァ」の旧市街。
毎日、結婚式。気温10度。薄着の花嫁さんは、
さぞかし寒いことでしょう。

著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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