2015年03月05日 公開
2023年01月30日 更新
プロ野球公式戦は、通常3月末に始まり、11月まで続く長丁場だ。その間、どうモチベーションを維持しているのだろう。
「シーズン中にモチベーションを保っていることは私の“ふつう”なので、基本的に落ちることはありません。たまにケガをしたときは、2日間くらい落ち込むけれど、3、4日目には『早く治そう1』という気持ちになってきます。
ここ数年は、6、7月になるとあえて『もう今年で引退か』と自分に言い聞かせます。そして、あと○日しかユニホームを着られないのかと思うとさらに闘志が湧いてくるのです。
昨年も、二軍での調整が続いていて『もう引退か』と思っていた矢先、8月終わりに一軍に呼ばれ、ダメならもう引退という覚悟でマウンドに上がりました。そして勝利投手になったことで、『これはもう1年やれるんじゃないか』という欲が湧いてきた。こうやって自分を奮い立たせることが、今もこうしてプレーしていることにつながっています。残りの試合数、投球数を意識するほどモチベーションは高まってくる。今が一番やりがいがあると言っても過言ではありません」
この登板で“プロ野球最年長勝利投手”となった山本氏。勝利投手になることが何よりも嬉しいという。
「個人の記録も嬉しいですが、それよりもチームに貢献できたことのほうが嬉しい。“勝利投手”はチームが勝ったからこそもらえるものですから。これまで219回勝利投手になりましたが、この気持ちはいつも変わりません。もちろん、チームが優勝して自分も活躍するのが一番の理想ですが(笑)」
最近は、チームのことをより強く考えるようになってきたという。
「昔は後輩であってもライバルという意識が強くありました。最近は、何かあったときに答えられるように、後輩のプレーをきちんと見たり、勉強をしています。コーチには言えないけれど、先輩には言えるということもあるので。人によって最善の方法は違うので押しつけはしませんが、相談や質問されたときにアドバイスができるように準備しておこう、と自然と思うようになったんです」
30年以上現役選手を続けていると、練習のやり方も変わってくる。
「今から考えると、昔はとにかく練習の鬼で、上から厳しいこともたくさん言われました。今は、野球の、さらにピンポイントな部分に特化した合理的なやり方。でも、どちらがいいというのではありません。どちらでも、いいと思ったことを自分で決めて取り入れればいいのです。私も後輩を見て『いいな』と思ったことは取り入れたりしています。長い間同じことを続けていると自分のやり方ができてくるものですが、頭を固くせず、柔軟に対応することが大切だと思います」
長く続けるために頑張り続けることは大切だ。しかし同時に、新しいものを受け入れる柔軟さも必要だということだろう。
「歴史書、とくに中国古典が好きでよく読むのですが、その中で出てきた『己を高める』という言葉が好きです。どんな状況であっても自分を高め、いつでも何が起きても対応できるようになりたい、そうあり続けたいと思っています」
自分が頑張ることで同世代の方の励みになれば、という山本氏。最年長記録の更新が期待される2015年シーズンはもう始まっている。
山本昌広
(やまもと・まさひろ)
プロ野球選手
1965年、東京都生まれ。小学校3年生から野球をはじめ、日大藤沢高校にスポーツ推薦で入学。1983年のドラフトで中日ドラゴンズに5位指名を受け入団。1988年、ロサンゼルス・ドジャースに留学、広島東洋カープ戦で初勝利。1993、94年に2年連続で最多勝利投手となり、90年代の中日投手陣を支える。1994年、2年連続の最多勝で沢村賞受賞。1997年、初の開幕投手に。2006年、通算2000奪三振と、プロ野球最年長紀録となる41歳1ヵ月でノーヒットノーランを達成。2008年、プロ野球史上24人目の通算200勝。2012年、球団最多勝利記録を更新。2014年、プロ野球最年長勝利投手配録を更新。1996年より登録名は「山本昌」。
<掲載誌紹介>
<読みどころ>同じ仕事、同じ条件のはずなのに、「なぜか今日はやる気が出ない」という経験、誰しもあると思います。それはなぜか、というのが、今回の企画の原点です。
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更新:11月22日 00:05