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心不全パンデミックが迫る...通常健診には含まれていない検査とは?

木原洋美(医療ジャーナリスト)

「からだスマイル」7月号

死因でよく目にする「心不全」は病名ではない。高齢化を背景に患者が急増する中、医療現場に迫る危機について、医療ジャーナリストの木原洋美さんに解説していただきます。

※本稿は、『からだスマイル』2026年7月号の内容を一部抜粋・再編集したものです。
※写真はイメージです。

 

超高齢社会を背景に患者が爆発的に増えそう

死因でよく目にする「心不全」は、実は病名ではないってご存じですか。

心不全は、心臓に何らかの異常があり、ポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。不具合があっても心臓は頑張って血液を送り出そうとしますが、無理が続けば当然、疲れてダウンしてしまいます。

このように特定の病気ではなく、さまざまな心疾患(心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症など)や高血圧などによって、心臓が限界に達してしまう状態が心不全なのです。

近年日本では、生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)や高齢化による高血圧や心臓弁膜症などの増加により、心不全の患者が急増しています。

現状の患者数は全国で約120万人ですが、2030年には130万人に達すると推計されています。がんの新規罹患者数が年間約100万人ですから、心不全の患者がいかに多いかが分かるでしょう。

こうした事態を国や医療者の団体は、感染症の爆発的な流行になぞらえて「心不全パンデミック」と呼んで、警鐘を鳴らしています。

 

深刻化する外科医不足救える命が救えない事態も

心不全パンデミックで何より怖いのは、患者が増えすぎて医療現場がキャパオーバーとなってしまうことです。特に近年は、心臓血管外科をはじめ、循環器医療の担い手が減りつつあり、大きな問題になっています。

とりわけ心不全では、循環器内科医の不足は「診断・慢性期管理の遅れ」を生む一方、外科医不足は〝救える命が救えなくなる〟直接的な死亡率上昇につながります。

どういうことかというと、「心不全には、①拡張型心筋症のように心筋そのものの動きが悪くなっていく心不全、②心臓弁膜症などで弁の逆流が進行して起こる心不全、③狭心症、心筋梗塞などによって、心筋が虚血に陥り、心拍出量が減って起こる心不全などがあります。重症化した場合、①では心臓移植、②では弁形成術や弁置換術、③では冠動脈バイパス術などの、外科的治療(手術)が行なわれます」(ニューハート・ワタナベ国際病院総長・院長渡邊剛医師)。

これ、何となくわかりますよね。私たちの身の回りの機器も、大切に扱いメンテナンスすれば長持ちしますが、経年劣化が進んでしまった場合には、部品交換が必要になります。心臓でも同様のことがいえそうです。

 

疑わしい場合には心エコー等で詳しく検査

では、私たちはどうしたらいいのでしょう。

「一番重要なのは予防ですね。そのためには、高血圧・糖尿病・動脈硬化性疾患など、心不全につながる生活習慣病を防ぐ、発症してしまった場合には治療・管理に努めて悪化させないようにするのが最善の対策です」(渡邊医師)

体調管理も、単に「食生活に気を配る」くらいでは足りないようです。

心臓弁膜症などでは、定期的な心臓超音波検査(心エコー)などで、心臓に構造的な欠陥がないかのチェックが必要です。虚血性心疾患では、造影剤を使った心臓CT検査が、リスクを確実に評価する診断につながります。

「これらの検査は通常の定期的な健康診断のメニューには入っていない検査です。心臓超音波検査はオプション検査として受けておかれることをお勧めします。痛みがなく、放射線被曝もないため、安全に繰り返し受けられる検査です。

造影剤を使った検査については、腎臓に負担がかかる懸念もあるのであまり一般的ではありませんが、疑わしい症状がある方や航空機のパイロットのように人命を預かる職業の方などは、受けておくことをお勧めします。一度検査を受けて大丈夫なら、5年間は安心と思われます」(渡邊医師)

心不全は、時間の経過とともにだんだん悪くなる進行性の病気です。2030年まであと4年。いざというときに後悔しないためには、心構えが必要です。

「心不全は深く静かに進行する病気です。サプリメントを飲めば予防や治療ができるといった類いの病気でもありません。少しでも症状があった場合にはすぐに病院に行って、詳しい検査を受けることをお勧めします。自己判断で受診を先延ばしするのは、命取りになるのでご注意ください」(渡邊医師)

◎監修:渡邊剛医師(心臓血管外科医。ニューハート・ワタナベ国際病院総長・院長)

プロフィール

木原洋美(きはら・ひろみ)

医療ジャーナリスト

コピーライターとしてさまざまな分野の広告に携わった後、軸足を医療へと移す。雑誌やWEBサイトに記事を執筆。著書に『「がん」が生活習慣病になる日』(ダイヤモンド社)がある。

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