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知っておくと差がつく!「ビジネスマナー術」/基本ポイント

2013年03月27日 公開
2023年05月16日 更新

〔監修〕岩下宣子(現代礼法研究所代表)

『THE21』2013年4月号より》

岩下宣子

中堅社員や部下をもって働くマネージャーの立場ならば、ビジネスマナーの基本はできていると思うかもしれない。しかし、「なぜ、そうするべきなのか」わからないまま、儀礼的に何となく守っているビジネスマナーもあるのではないか。また、自分の知っているマナーが当てはまらない場合や、改まったシチュエーションでは迷うことも多いだろう。岩下宣子氏に、型を守りつつ臨機応変に、相手によい印象を与えるマナーのポイントを教えていただいた。<取材・構成:林 加愛>

マナーとは相手に対する思いやり

そもそも、マナーとは何のためにあるのだろう。
型を守ることがどうして必要なのだろうか。
また、ビジネスマナーとは、日常生活のマナーと何が違うのだろうか。
いちばん重要な心構えを、まずはおさらいしよう。

 

“ルール”の根にある“基本精神”が大事

マナーとは、「自分を大切にするように、人を大切にすること」。「ビジネスマナー」でいうなら、「自分を大切にするように、同僚・顧客・取引先を大切にする」ということです。マナーというと、とかく「細かなルールや決まりごと」のイメージが先行しがちですが、真に大切なのはこの基本精神。表面的にルールを守っても、その奥に思いやりがなければ意味はありません。

では、思いやりさえあればルールはどうでもよいか――というと、それも違います。もしもルールが存在せず、「お葬式に参列する服装は自由」などということになったら、かえって困るのではないでしょうか。「この格好でよかっただろうか?」と自信をもてず、落ち着かない気持ちで参列することになります。すると、ご遺族への思いやりをもつ余裕もなくなってしまうでしょう。

そう考えると、ルールはやはり必要。思いやりの心を発揮するためには、マナーの「精神」と「決まりごと」の両方を身につけることが不可欠なのです。こう語ると、「思いやりがそこまで重要か?」と疑問をもつ人もいるかもしれません。仕事においては自分のキャリアアップが第一、気配りや優しさは二の次ではないか、と。しかし、どんなに有能な人でも、「自分さえよければ」という考え方では人望を得られず、いずれ限界を迎えるでしょう。

これまで私はマナー講師として多くの会社と関わってきましたが、優秀な方や、高い業績を上げている人ほど、総じて人間関係も良好で、他者への気遣いが細やかな人ばかりです。

会社単位でも同じことがいえます。業績のよい会社はチームワークがしっかり機能しており、その背後には必ず、心のこもったマナーが浸透しています。

さて、職場でこのようなよい雰囲気をつくり出すには、30~40代の活躍が欠かせない、と私は考えています。

この世代は、上司・部下・取引先・同業者・顧客など、さまざまな人間関係のつなぎ目となる立場にいます。この人々が意識的に拠点となり、あらゆる方向へ心配りをすることで、周囲にも好影響を及ぼしていくことができるでしょう。

なおこの場合、方向性が多様であるぶん、対応のありかたも一様ではありません。そこで、「相手の感じ方」をそのつど想像しながら行動することが必要となってきます。

「自分がされて嬉しいことをする・嫌なことはしない」がマナーの大原則ですが、そこには例外もあります。すべての人が自分と同じ感じ方をするとは限らないからです。

じつは私も昔、その点で失敗をしました。薬を飲む習慣のある先輩に、服用のタイミングを見計らって毎日水をお出ししていたところ、ある日「息苦しいからやめて」といわれてしまいました。気を利かせたつもりでも、相手が負担に思うこともある。そう知ってからは、相手をよくみてから行動に移すようになりました。

このように、マナーは決して型どおりのものではなく、観察力・洞察力・臨機応変性などを必要とするものです。

とはいえ、恐れる必要はありません。堅苦しく考えず、まずは行動してみましょう。誠意さえ伝われば、失敗しても相手は許してくれるものです。試行錯誤を繰り返しながら、自分ならではの心配りを実践できるビジネスマンをめざしましょう。

 

岩下流ビジネスマナーの基本ポイント 4

【1】自分と相手を等しく尊重しよう

「自分さえよければ」という自己中心主義、はたまた「自分を犠牲にして会社のために……」という滅私奉公は、いずれもNG。両方に等しく心を配ることを基本としよう。

【2】自分を知り、相手を知ることが大事

心配りの第一歩は自分を知ること。自分の性格や欠点を自覚するだけで、陥りがちな失敗の大半は防げるもの。同時に、相手を知ることも大事。その人が喜ぶこと・嫌がることは何かを想像するクセをつけよう。

【3】失敗は気にせず、自分の糧にしよう

マナーには数多くのルールがあるため、失敗や間違いはつきもの。しかし、ルールに縛られて何もできなくなるのはナンセンス。「失敗したっていい!」とおおらかに構え、実践しながら少しずつ学んでいこう。

【4】「思いやりと希望と感動」を演出しよう

(1)思いやり(2)希望(3)感動は、脳を活性化する3大要素といわれている。これを職場に置き換えると、(1)マナーと気配り(2)目標(3)達成感の共有、となる。この3つを、積極的に周囲に提供するよう心がけていこう。自身の能力と職場の生産性が同時にアップするはず。

 

岩下宣子 (現代礼法研究所代表)

1945年東京都生まれ。共立女子短期大学卒業。キッコーマン〔株〕入社。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流の小笠原満信氏のもとでマナーを学び、1985年に現代礼法研究所を設立。多数の企業や公共団体、商工会議所などで指導、研修、講演を行うほか、NPO法人マナー教育サポート協会理事長も務める。『図解 マナー以前の社会人常識(講談社α文庫)、『これだけは知っておきたい!ビジネスマナーBOOK』(新星出版社)など、著書多数。

 

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