2026年04月06日 公開

お笑い芸人・寺田寛明さんによる「大喜利入門講座」。今回は、「異世界系お題」「ツッコミ力」 といった大喜利テクニック、そして「実際に大喜利に参加する方法」について解説します。
※本稿は、『THE21』2024年4月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

近年、「異世界系」と呼ばれるコンテンツが大流行しています。その影響を受けてかはわかりませんが、大喜利でも「異世界系お題」が増えているように感じます。
とはいえ、マンガやアニメのような壮大なものではありません。「通貨がプリンになっている世界」とか、そんなのです。
そんな異世界系お題ですが、これが結構な曲者です。「世界」という言葉の含む意味が広すぎて、何とでも回答できるあまり、どう考えていけばよいかわかりにくいのです。回答の自由度が高いお題のことを、私は個人的に「出口が広いお題」と呼んでいます。基本的にお題の出口は広いほうが回答しやすいのですが、広すぎると逆に困ってしまうもの。
そんなときは、あえて出口を狭くする方法がお勧めです。「世界」だと広すぎるので、シチュエーションを限定することで考えのとっかかりを作るのです。
例えば、「みんな基本的に逆立ちで生活している世界」というお題が出されたとします。その光景を思い浮かべるだけで面白いですが、その面白さを言葉にして抽出しなければいけません。
そのために、「みんな基本的に逆立ちで生活している世界のヤンキー」と、お題を限定してみましょう。
【回答】ヤンキーの膝と膝がぶつかって喧嘩になる
このようになります。では続いて、「みんな基本的に逆立ちで生活している世界のお葬式」としてみましょう。
【回答】お葬式で棺桶の窓を開けたらつま先が見えた
このとき注意すべきなのは、「ヤンキーの」「お葬式で」といった、自分が限定したシチュエーションを回答に盛り込むことです。他の人からすれば、お題は「みんな基本的に逆立ちで生活している世界」のままなので、説明不足で伝わらなくなるようなことは避けましょう。
ここまで全3回にわたって、大喜利でボケるコツをお伝えしてきましたが、趣味で大喜利を始めるメリットは、「ボケる」力がつくことだけではありません。
むしろ社会において実用的なのは、ツッコミ的な目線を持つことではないでしょうか。
大喜利では、お題(フリ)が出て、回答(ボケ)が出されます。それらを見続けていくうちに、世の中にある様々なボケのパターンが見えてきます。つまり、自身も回答を出しつつ、人の回答を見れば見るほど、ボケの意図が見えるようになってくるのです。
皆さんの身の回りにも、「これは冗談で言っているのか? 真面目に言っているのか?」と周囲を困惑させてしまう人が、一人くらいいるのではないでしょうか。その人が冗談のつもりだった場合、その冗談が伝わらなければ、本人も悲しいし周囲も困ってしまいます。誰も得していません。
そんな中で、一人その意図を察して的確にツッコむことができれば、ボケた本人も嬉しいですし、周囲もホッとします。ツッコミって、「人を助ける」という側面が強い気がしています。
大喜利のライブに出演しているときも、そう痛感する場面がよくあります。それは「ライブMCのツッコミに助けられたとき」です。MCの主な仕事は、回答を出す前にお題を読み上げたり、次に回答する人を選んだりすることですが、回答に合いの手やツッコミを入れて場を盛り上げてくれたりもします。
大喜利ライブで「真面目に言ってるのか?」と疑われることはさすがにありませんが、こちらの意図が伝わらず、お客さんと温度差ができてしまうこともあります。回答を出した瞬間に笑いが起こらず「やべっ」と思ったときに、「いやそれ○○じゃねーか!」とMCにツッコんでもらい、そこでやっとウケたときなんかは本当にありがたいと思います。
実例を挙げてみましょう。「こんな漫才師は嫌だ」というお題があったとします。そして、以下の3つの回答が出てきました。
Ⓐ年末はハワイに行くためM-1には参加しない
Ⓑ裏拳で相方の顔面を殴った
Ⓒ炊飯器を万引きした
Ⓐへのツッコミは特に難しくありません。「M‒1は出ろや!」と言っておけばツッコミとして成立します。
Ⓑの「裏拳で相方の顔面を殴る」は、セルライトスパという漫才師が実際に起こしたハプニングです。そのことに触れてツッコめば、周囲の「?」が笑いに変わる可能性がありますし、それでウケなかったとしても「わかってくれた人がいる」というのは回答者にとって救いとなります。
Ⓒは何にもかかっていません。言うなれば、「何にもかかっていないというボケ」です。そのことを見抜いて、「漫才師じゃなくても嫌だろ」とか言ってあげられると上級者です。
もちろん、今挙げたⒷ、Ⓒのようなツッコミは一流の技術です。並大抵のことではありません。ですが、その域ではなくとも、ボケに気づいてツッコんであげることができれば、日常のコミュニケーションにも大いに役立つのではないでしょうか。

もう一つ、大喜利の経験が日常生活で役立つとしたら「スベっている人に寛大になれる」ということでしょうか。毎日のように誰かしらが炎上している昨今ですが、その中には「冗談のつもりが伝わらずに怒られた」という「スベり炎上」も多いように感じます。
個人的には、それに対して怒ってる人って、普段あまり冗談を言わない人なんじゃないかと感じます。
「笑いにならなかったらそんなものは冗談でも何でもない」という意見もわからないことはないんですけど、大喜利などで習慣的にボケていると、ウケない経験も、それによって空気が悪くなる経験も、何なら人格を疑われる(猟奇的なことを言う、といったボケをしたら悲鳴があがったり)経験もします。
「なんか部長が今よくないこと言ったけど、どうやら冗談っぽいな。まあ俺もボケで言ったことがうまく伝わらなくて変な空気にしたことあるしな」と、1回2回は大目に見て流せる社会のほうがいいと思います。
まあ本当に問題になってしまう人は、そういう失言を1回2回じゃなく積み重ねちゃう人なんでしょうけど、受け手としての心構えがあったっていいとは思います。

さて、4回にわたって、色々と解説をしてきましたが、最後は実際に大喜利に参加するきっかけをご紹介できればと思います。
やっぱり技術論だけで成長するというのはどうしても限界があり、人と人との間でやることですので、「百聞は一見に如かず」で参加してみるのが一番早かったりします。難しいことを考えないほうがうまくいったりしますし、何から何まで難しくて刺激的な世界だと思います。
●スマホからでも参加できる ネット大喜利「大喜利茶屋」
オンラインで全国のユーザーと回答を出し合う大喜利サイトです。回答が出揃ったあとはユーザー同士で投票を行ない、上位に選ばれた回答者にはポイントが付与されます。獲得ポイントのランキングも公開されているので、ユーザー同士で競い合う楽しみ方もできます。
回答時間が1日の「日めくり」と、4分の「昼/夜/季節の茶屋」にルールが分かれているため、自分の好みや生活スタイルに合わせて気軽に参加することができます。大喜利の入り口としてチャレンジしやすいのではないかと思います。大喜利サイト自体は他にもいくつかありますが、最近はこの大喜利茶屋が人気を集めている印象です。
●誰でも大喜利ができるカフェ「ボケルバ」
秋葉原にできた大喜利カフェです。
お題を出してMCもできる店員が常駐し、平日昼間でも、人が集まれば大喜利ができるスポットです。
私もふらっと行くことがあるのですが、春休みの時期に行ったときには、高校生の子とかもいました。若い人ばかりというわけでもなく、幅広い年齢層のお客さんがいるので、誰でも参加しやすい、初めての対面大喜利には最適だと思います。たまにトーナメント式の大会を行なっていることもあります。
昔はこういった場所がなく、フリーエントリーの大喜利イベントを探さなければいけなかったのですが、今は「ボケルバ」のような参加しやすい場所から交流をもって、他の会の情報も得られたりするので、非常にハードルが低くなったと思います。
●大喜利天下一武道会
2007年からの歴史を誇る、最も大きな大喜利の大会です。
まず予選が行なわれる、と聞けばその規模の大きさが何となく伝わるのではないでしょうか。予選には300人(!)ほどエントリーします。
大喜利の大会自体は他にもあるのですが、これほど人が集まることはなかなかありません。大喜利好きの一つの目標と言えるような大会です。
大喜利大会に出たいと思っても、おそらく探すのが難しいと思いますが、六角電波さんという方がよく大会を開催されているので、Xを見てみるといいかもしれません。初心者限定の大会もあったりします。
●ラジオ投稿
昔から、ハガキ職人と呼ばれる人々が芸人のラジオ番組のネタコーナーにメールを送って、そこから放送作家になったり大喜利を始めたりという流れがあります。
放送作家への足掛かりにしようと思うのなら、人気番組にメールを送りまくる必要があるかもしれませんが、投稿を楽しむだけであれば、番組にこだわる必要はありません。
昔はニッポン放送やTBSの深夜ラジオなど、投稿の場が限られていたのですが、今は芸人の番組が様々なインターネットアプリで配信されており、そこへの投稿はかつての人気深夜ラジオと比べ、投稿が読み上げられる確率が高くなっています。
様々な配信サイトで、あなたのメールを必要としている芸人がたくさんいるはずです。こういった場所で自分が書いた文章を音声で読んでもらえるというのも、ネット大喜利とは少し違った喜びがあるはずです。
●大喜利YouTubeチャンネル「大喜る人たち」
最後に、イベントではありませんが、近年人気を集めている大喜利チャンネルを紹介します。
内容はシンプルで、芸人を含めた(私もしばしば登場しています)プレイヤーが大喜利にどんどん回答していくというものです。元々は狭い会議室で収録していたチャンネルなのですが、動画が何度かバズっていくうちに少しずつ規模が大きくなり、ライブのチケットが即完売するまでになりました。現在チャンネル登録者数は17万人を超え、大喜利という文化が広く認知されていることがわかります。
「大喜る人たち」から派生したチャンネル「こんにちパンクール」も人気を集めています。
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「大喜利は芸人や落語家の文化」と長らく考えられていました。ですが、今回紹介したライブやYouTubeチャンネルを見ていただければ、知名度のない一般の方が芸人と互角以上に大喜利で渡り合えていることがわかるはずです。そして、芸人と一般の方が大喜利というコンテンツで共存していることが大切だと、私は考えています。
私は「大喜利千景」という大喜利ライブを10年前から主催し続けているのですが、そのライブがまさに、芸人と一般の方が共存できる場を作りたいという思いから生まれたものです。そして、先ほど紹介した「大喜る人たち」は、「大喜利千景」を見て、始めてくださったそうです。
この連載を読んでくださった皆様にも、ぜひ大喜利の世界に飛び込み、楽しんでいただけると嬉しいです。
更新:04月07日 00:05