2012年10月03日 公開
2022年11月30日 更新
「仮説→検証」を行なう際には、むやみに仮説を立てるのではなく、いかに的確な仮説を設定できるかが重要になる。そのためには、正しい知識や情報の収集も大切だという。
「ビジネスマンなら読んでおくべき本がいくつかあります。たとえば、マーケティングに関することならフィリップ・コトラーの本、経営学であればピーター・ドラッカーの本、という具合です。
これらの本は、いわばビジネスの教科書として使われているもので、マーケティングや経営学に関する専門用語はすべてここから派生しています。ビジネスにおけるこれらの共通言語を知らないと、論理力を身につける以前に、レベルの高いビジネスマンと話が通じないということになり、ビジネスが成立しません。
ほかにも、『企業参謀』(大前研一著/プレジデント社)などもお勧めです。MBAコースで使われるくらいの用語は、ビジネスマンとして知っておくべきでしょう」
ビジネス書コーナーでは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海著/ダイヤモンド社)のように、難しい概念をわかりやすく説明した本も人気だ。しかし、こうした本を読んでもあまり意味がないと成毛氏はいう。
「たしかに『もしドラ』はわかりやすく書かれていますが、ビジネスの概念を簡単に説明した本を読んでも、わかったような気になるだけで、知識として身につくことはありません。
こういった本を読んでわかった気になった人は、“使われる立場”から抜け出すことができません。なぜなら、概念は知っているけれども深くは理解していない人は、“使う側”にとっては好都合だからです。
もし、使われる側から脱してキャリアアップをめざしたいのなら、上のレベルのビジネスマンが共通言語として知っている内容を、自分も知っておく必要があるということです」
「ただ、ここで気をつけてほしいことは、論理的であることだけがビジネスの成功の法則ではないということ」と成毛氏。いったい、どういうことなのだろうか。
「たとえば、新商品開発や新規事業戦略の立案など、クリエイティブな仕事をしている人にとっては、論理思考はかえって足枷になるでしょう。新しいものを生み出すには、論理的に考えるよりも、いかに発想を飛躍させられるかが勝負だからです。
トヨタの『プリウス』がいい例です。『プリウス』が世に出た1990年代は、エコをビジネスにするにはまだハードルが高く、論理的に考えれば、莫大なコストをかけてハイブリッド車を開発しようとは思わないはずですから。『 iPhone 』だって、論理的に考えたというよりは、発想を飛躍させて開発されたものでしょう。
もちろん、飛躍的で斬新なアイデアも、論理的に説明することができなければ、上司をはじめ、社内の人たちを説得できません。非論理的なことを実現するには、社内外での賛同を得るために、それを論理的に説明できる能力も必要です。論理的に話す力は、英米系企業で成功したい人には、とくに不可欠な能力だといえます」
つまり、論理的に説明する能力も、時と場合によってはマイナスに作用することもあるということだ。
「英米系企業であればともかく、日本企業で過度に論理的な能力を発揮すると、逆に煙たがられる場合もあり得ます。論理的ではないタイプの上司に対して論理的に理路整然と話す部下は、『生意気なヤツだ!』と反感を買ってしまう可能性があるわけです。
出世したいだけなら、論理力を磨くよりも、日本式のビジネス処世術を学んだほうが有利かもしれません。
一般ユーザー向けの営業活動でも、論理的であることがいいことだとはかぎりません。一般の方に対する接客や販売店へのルートセールスでは、論理的に話すよりも、感情に訴えかけたり、人間関係をつくったりするほうが上手くいきます。
たとえ非効率だと思っても、客先に何度も足を運び、顔を覚えてもらうことが大切です。マイクロソフトの日本法人社長だったときは、『毎日、秋葉原の取引先に足を運べ』と営業担当者にいっていました。論理力とは、相手や場面に応じて使い方を変えるべきものなのです」
[1]サイエンスのノンフィクションを読む
サイエンスのノンフィクションでは「仮説→検証」のプロセスが繰り返される。何冊も読んでいくうちに、頭のなかで「仮説→検証」のプロセスが何度もシミュレーションされることになる。ビジネスの現場でもこのプロセスで考えられるようになれば、論理的にビジネスができる。
[2]ビジネスマンの共通言語を学ぶ
MBAコースで学ぶ用語は、レベルの高いビジネスマンと話をする際の共通言語。知らないと、論理以前に、話が通じない。わかりやすく解説した本も多いが、それらを読んでわかった気になっているだけでは、ビジネスマンとしてのレベルアップにはならない。
[3]論理力の使いどころを心得る
ビジネスにおいては、論理的であればいいというものではない。発想を飛躍させたほうがいい場面もあるし、感情に訴えたほうがいい場面もある。不必要に相手を怒らせてしまったり、不快感を与えたりするような論理力の使い方はすべきではない。
更新:11月23日 00:05