2023年09月05日 公開
子育てが終わる人が増えてくる50代。子どもが独立して自宅のスペースを持て余したり、子育てパートナーとして過ごしてきた関係が変わったりする夫婦も多いだろう。
50代でコンパクト平屋に住み替えた人気ブロガーのRin氏は、50代から始めると良い"自宅の整理"のコツを紹介する。
※本稿は、『THE21』2023年10月号特集「50代で必ず整理しておくべきこと」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
同年代の皆さんも、そろそろ暮らしのダウンサイジングを検討している方が多いのではないでしょうか。そんな方々からよく、「何を捨て、何を残すか迷う」というお悩みを寄せられます。
ここは本当に個々の価値観次第ですが、ご参考までに、私のケースをお話ししましょう。
最も大量に捨てたのは服です。昔奮発して買ったけれど型が古くなったもの、体型が合わなくなったもの、「補修すればまだ着られる」と思いつつ実行に移していないものなど。
「現役でない服」がクローゼットを埋め、一方で「今日着る服」がないからまた買い、さらに収納が不足する……という悪循環を、これで脱出できました。
キッチンでは、衝動買いしたものの使いこなせていない「便利グッズ」を多く手放しました。家電も、使いこなせていないものが多々ありました。
例えば、高機能なぶん構造が複雑でメンテナンスが面倒な掃除機など。前述の通り、年齢を重ねてからの生活では手入れの大変な品や重量のあるものが負担になります。今も、うっかり買わないように気をつけています。
アルバムも9割がた捨てました。自分の幼い頃や家族の写真は、全部デジタル化してクラウドで保存。そのうち選りすぐりのものだけを紙の写真で残し、「娘の一冊」「私の一冊」としてアルバムにしました。
その結果、以前よりも思い出が身近になりました。懐かしい一枚を見たいとき、段ボール何箱ぶんものアルバムを掘り起こさずとも、すぐに取り出せる一冊があるからです。
ちなみにデジタルも非常に便利で、親戚の集まりで「おじさんの若い頃の写真だよ」とタブレットに表示すると、皆が喜びます。モノを絞り込み、出し入れを簡便にすることは、「心豊かに過ごす」ことにつながるのだと実感します。
思い出のもののデジタル化は、老親が暮らす実家を片づける際にも有効です。
親が保存しているものの中で、意外に多くを占めているのが「子どものもの」。つまり、皆さん自身の子ども時代の品々です。古い教科書や、習い事で使ったグッズなどは、「使った本人」が処分するのがお勧めですが、それらは親御さんにとっても「思い出の品」で、手放したがらないかもしれません。
しかし、前述の通り、物量が多すぎればわざわざ取り出して懐古すること自体難しいはず。すべて捨てないまでも、写真に撮って保存し、残すものを絞り込んだほうが、思い出が近しくなるでしょう。
自分の家にせよ実家にせよ、整理をするなら50代は絶好のタイミングです。若い頃ほどではなくとも、まだ体力がありますし、「働き盛り」をやや過ぎて自由な時間が増えた方も多いのではないでしょうか。
50代前半で持ち物をスリムにすると、50代後半以降の生活が身軽になります。私は現在、週に2度ほど、二人の孫の面倒を見に都内に通っていますが、仕事と家事に追われていた10年前なら、とてもその余裕はなかっただろうと思います。
逆に10年後となると、今度は親の介護や、自分自身の体力の低下、ときには大きな病気をする可能性が出てきます。「自分の向こう30年」を考えると、60代に入らないうちに動いたほうが得策と言えるでしょう。
さて、「向こう30年」と言いましたが、今暮らしている家は、さほど老後を意識したつくりにはしていません。唯一の例外は全館空調。夫が高血圧気味なので、ヒートショック防止のために全室の温度を一定にしました。それ以外のこと、例えば「手すり」などはつけていません。
なぜなら、どのような「衰え方」をするかによって、必要な補助は変わってくるからです。脳梗塞で倒れた場合も、寝たきりになる人もいれば、車椅子の人、つえ歩行になる人など様々です。
車椅子生活になれば手すりはかえって邪魔になる場合もありますし、麻痺が右側に出るか左側に出るかでも、つけるべき位置が変わります。
老後の自分や夫の体がどう変化するかは予測不能なので、将来何らかの不自由が起こった段階で、その状況に合わせた改修をしようと考えています。小ぶりで複雑すぎない間取りの家は、それを見越してのものでもあります。
いつかは私たちも老年期を迎え、施設などに移る日がくるでしょう。それまでの年月に訪れる様々な変化を受け止める「応用力」も、シンプルな家と暮らしが持つ「強み」なのではないかと思います。
更新:12月04日 00:05