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「50代向けと10代向け」の違いは? SHOWROOM代表が考える「チャンスの広げ方」

2020年09月25日 公開

前田裕二(SHOWROOM代表取締役社長)

夢を叶えたい人と、それを応援したい人が集まるライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」を運営する若き経営者・前田氏は、コロナ禍を経て、時代はどう変わると読んでいるのか?(取材・構成:林 加愛)

※本稿は『THE21』編集部編『コロナ後の新ビジネスチャンス』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

リアルライブにはない「デジタルの役割」

新型コロナウイルスの感染拡大によって、現在(2020年7月上旬に取材)は徐々に緩和方向に向かいつつあるとはいえ、リアルでのライブは依然、制限された状態が続いています。

そのため、ライブを行なう場をリアルからバーチャルに移す人が増えていて、当社が提供している仮想ライブ空間「SHOWROOM」においても配信者数が急増しています。また、視聴者数や課金ユーザー数、収益についてもそれぞれ、軒並み急伸している状況です。

ただ、僕はストリートで路上ライブをしていた経験もあり、リアルな空間におけるライブへの思い入れを人一倍強く持っています。当社のビジネスの基盤を築いてくれたのは、やはり、リアルの場でライブをしているアーティストやアイドルなどの演者の方々です。

ですから今は、コロナ禍によって苦境に陥っているアーティストの新たな収益軸を作るべく、「還元」「進化」「融合」の三つのキーワードを掲げて事業を開発・運営しています。

「還元」については、コロナでITが盛り上がっている中で、逆に我々が愛する音楽やエンタメは苦しんでいる。何か、エンタメ業界全体の支援につながるような還元施策が提供できないか、今こそ立ち上がるときだ、という視点です。

具体的には、今年5月に有料ライブ配信機能「プレミアムライブ」の提供を始めました。SHOWROOMの配信は基本的に無料で視聴できるのですが、プレミアムライブは、リアルなライブと同様、チケットを購入して視聴する形にして、その売上をアーティストに還元しています。決済手数料なども差し引かず、売上を100%還元するキャンペーンも行ないました。

二つ目の「進化」は、リアルライブというアナログのコンテンツを、配信というデジタルの形式に乗せて、まず一歩進化させようというものです。それによって、元々の「100%」が「数十%」に落ち込んでしまっているアナログ側のエンタメ収益を、少しでも100に近づける、という取り組みです。

例えば、デジタルでのライブ放送を行なっていなかったアーティストがそれを行なえば、一つの進化と言えます。リアルに比べると当然単価は下がってしまいますが、視聴者数はリアルよりも多くなるケースもあり、このシンプルな「デジタル進化」によって、リアルなライブで減った収益をある程度、補填することができます。

また、最近よく投げ銭の取り組みがニュースになったりもしますが、ライブ配信で「ギフティング」という新しいビジネスモデルに挑戦することも、幅よりも深さを収益の源にするという点で、また別の進化の形と言えます。このようにして、コロナをきっかけに、ビジネスモデルを進化させていこう、というのが、二つ目の視点です。

三つ目は、「融合」です。いずれ、コロナさえ収束すれば、元々のリアルでの売上は次第に戻ってくるでしょう。そのときに、コロナで「進化」したビジネスモデルを上手に組み合わせれば、ビフォアコロナにおける100%の市場規模は、200や、300%という異次元の規模に広がっていく。

つまり、しっかり進化の道筋を踏んだあとに訪れる新しい未来においては、デジタルとエンタメが綺麗に融合することによって、エンタメがとてつもなく強くなっている、という視点です。

ビジネスモデルにデジタルを混ぜ込むことは、単にマネタイズの手法を広げるだけでなく、「客層を広げる」というメリットももたらします。つまり、今までアナログでは訴求できなかったターゲットに向けて確実にコンテンツを届けることができるのです。

例えば、50代に人気のベテランのアーティストと、ヨルシカやコレサワなど、10代に人気のアーティストでは、MVの作り方が根本的に違うように思います。一つ顕著な特徴としては、前者は実写メインであるのに対して、後者はアニメーションが多い。

単純ではありますが、これまで10代のファンが少なかったアーティストでも、ボカロPを巻き込み、アニメーション調のMVや新しいクリエイティブをYouTubeやTikTokに上げてみてはどうか。それだけで、10代の目に触れるチャンスが広がるかもしれません。

 

これからの経営は「視点×視座」で決まる

僕は、少なくとも日本においては、お金やモノよりも、夢や希望に飢えている人が多いと感じています。

「やりたいことが見つからない」という相談を、これまで若い人から何度受けたかわかりません。そんなときいつも、「悲しまなくていい」と答えています。自分が夢や希望を与えられなくても、誰かの夢の中に入る=「夢中」になる生き方もあるからです。

これからの組織は、夢や希望を与える強く温かい村長のもとに、その夢の中に入って頑張る村人が集まった、結束の強い集落や村のようなイメージになると思います。夢を与える村長になってもいいし、村長の夢や希望を実現するために互いに助け合いながら働く村人の一人になってもいいわけです。

そして、その中の誰が偉い、ということはなく、あくまですべて役割であり、どのポジションが自分にとって一番向いていて幸せそうか、という観点で考えると良いでしょう。ちなみに、多くの人を集められる夢や希望とは、どういうものか。それは、「視座×視点」の掛け合わせで決まります。

まず、「視座」が高い夢でなければワクワクしませんから、人が集まりません。もし、コロンブスが「ちょっとそこの島まで行きたい」と言っても、仲間は集まらなかったでしょうし、資金も集められなかったでしょう。

「まだ見ぬ新大陸を発見したい!」と大風呂敷を広げたからこそ、人も資金も集まったのです。ただ、視座が高すぎるだけだと、「とてもムリだろう」と思われて、やはり人がついてきません。そこで必要となるのが、「視点」です。

視点とは、高すぎるように思える視座を実現するための具体的手順であり、実現可能性です。どうすれば実現するのかを緻密に考え、示すことができれば、人がついてきます。

とても達成できそうに思えない目標と、「確かにそうすれば達成できるかもしれない」と思える方法の、双方を提示できる人が、夢を与える真のリーダーになれるのだと思います。

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